NAGANO SDGs PROJECT主催

実施報告

参加型ワークショップでジェンダー平等について理解を深めよう!

団体名: 公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン

開催概要

2023年7月25日(火)松本深志高校で出前授業を実施しました。

掲載日:2024年11月21日

テーマ:「参加型ワークショップでジェンダー平等について理解を深めよう!」


講師:公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン  アドボカシーグループ


澤柳 孝浩氏


受講者:松本深志高校 1年生19名


 


【本日の取り組み】


ワークショップを通じてジェンダーについて楽しみながら学び、国内外のジェンダー課題について理解を深めます。また、SDGs(特に目標5:ジェンダー平等)や国際NGOプラン・インターナショナルの活動について学びます。


 


【ウオーミングアップ】


澤柳さんの所属するプラン・インターナショナルは、世界75カ国以上で活動する国際NGO。世界の子どもたち、特に女の子が直面する課題の解決に取り組んでおり、国内では「ジェンダー平等」を実現するために啓発活動などを行っています。


今日集まった19名は同じ深志高校の1年生ですが、違うクラスの生徒も多いので、はじめに1人30秒で自己紹介をしてもらいました。皆さんからは「現状を知って、今後につなげたい」「自分に何ができるか、知識を広げたい」「みんながどう思っているのか知りたい」など、今日の授業に対する意欲的な言葉が聞かれました。


 


【アクティビティ1「男女のイメージ」】


前半は「男女のイメージ」についてのアクティビティ。全員立ち上がり、教室を4つのエリアに分けて、澤柳さんの「問い」に対して自分が思う「答え」の場所に移動します。選択肢は、1.そう思う 2.どちらかというとそう思う 3.そう思わない 4.どちらかというとそう思わない―― の4つです。


 


問1:女の子はメイクをした方がかわいい?


移動してみると、全体では「そう思う」「どちらかというとそう思う」人が多数。理由を尋ねると「メイクをしてかわいくなる人もいる」「自分を磨くという意味でも必要」と、メイクを肯定する意見が。「そう思わない」人はごく少数でした。


 


問2:男の子は人前で泣かない方がいい?


2人を除き、ほぼ全員が「そう思わない」エリアに。「男女関係なく、泣きたいときは泣けばいい」と寛容な意見が多数出ました。残りの「どちらかというとそう思わない」のは、なんと参加者のうちたった2人の男子でした!「そもそも人前で泣くというのがどうかと思う」「泣きすぎる人はめんどくさい」―。泣くという行為自体に否定的でした。


 


問3:女性は男性より家事・育児に向いている?


これは答えが割れました。「家事・育児を実際にしているのは女性が多い」「手先が器用な人、不得意な人もいる。性別で決めるものではないのでは」それぞれに意見がありました。


 


いったん席に戻り、4~5人のグループに分かれます。今度は「女の子って、男の子って、どんなイメージ?」との問いに、自分の考えをふせん1枚に1個ずつ書き出し、グループで共有します。その後、黒板の模造紙に貼り付けてみると、イメージの傾向があらわれてきました。


女の子のイメージ・・・かわいい、メイクする、赤色・ピンク色が似合う、おしとやか、家事や育児、料理・裁縫などが得意――など。


男の子のイメージ・・・かっこいい、力が強い、スポーツが得意、ご飯をたくさん食べる、青など寒色系の色――など。


 


次に、「それらは、何(誰)によって?どんな場面で?そういうイメージが醸成されてきたのでしょうか?」これもそれぞれの考えをふせんに書いてグループで共有し、模造紙に貼り付けます。その結果、親や祖父母・家庭・先生・周囲から、テレビ・教科書・学校・歴史などを通じて、男の子・女の子のイメージが醸成されてきたことがわかりました。なかには「ミッキーとミニー」というユニークな意見も。


 


【ここで映像を視聴】


SOGIESC(性の多様性)について、解説された動画を見せてもらいました。性的指向・性自認・身体の性別・ジェンダー表現 が「一致しない」と感じる人がいます。それらの組み合わせが珍しい人をLGBTQと呼ぶそうです。動画では、自分の価値観を押しつけたりせず、認め合い、尊重し合う必要性が強調されていました。


 


【アクティビティ2「ちがいのちがい」】


ワークシートが配られました。5つの「ちがい」について「あってもいい」「いけない」どちらかに丸をつけ、そう思う理由を書いて再度グループ内で発表し合い、意見交換します。


 


A:行事の準備で、男子は重いものを持ちなさい、女子は持たなくてもいい、といわれます


→男でも力のない人はいるし、女で力持ちの人もいる。やれる人がやればいいのでは?と「あってはいけない」側の意見が多く出ましたが、男子からは「あってもいい」という意見。自分自身に力があるので、他人より率先してやりたいと考えているようです。


 


B:両親は共働きですが、家事は母親だけがやります


→家庭によって事情があるけど、誰がやってもいいのでは。できる時にできる人がやればいいと思う。一人に負担をかけるのはよくない。女性が家事をした方がいいという理由はない。ということで「あってはいけない」意見が大多数。


 


C:日本の中学校の校長は、91%が男性、9%が女性です


→どんな仕事でも平等に採用されてほしい。女性が昇格しづらいとか高い地位に就けないのはよくない。同じ仕事をしているのに差があるなんて腹が立つーーと「あってはいけない」が優位。


 


D:日本の給与所得者の平均給与は、男性が545万円、女性は302万円です


→「あってはいけない」が多数。育休をとるのは女性が多い。子供の面倒を見るために仕事を休んでいるのに給料が低いのはやるせない。


 


E:電車に女性専用車両はあるが、男性専用車両はない


→ 例えば妊婦さんは、女性専用車両の方が席を譲ってもらえる確率が高いと思う。痴漢に遭うのは女性だけだから女性専用車両ありでいいと思う。一方、男性の気持ちはわからないけど、女性が同じ車両にいるのが怖い人もいるのでは?と思いやりの声も。女性専用、男性専用、男女共用3つあればいい、という意見は共感を得ていました。


 


そして、澤柳さんはこれらの問題をそれぞれグラフで解説してくれました。各国の男女間の格差を表す「ジェンダーギャップ指数」ランキングで、日本は現在146カ国中なんと125位!教育や医療といった分野では高いですが、政治や経済の分野で足を引っ張っています。日本の女性の給与所得が男性の75%程度と低いのは、収入の多い「役職」につく女性の少なさも関係あると澤柳さん。社長の女性比率は現在8.2%で中学校長の女性比率より低いですが、これでも良くなって来ているんだそうです。このように、データや背景を踏まえて男女の格差を認識し、考えていかなくてはいけないことを強調しました。


「価値観というのは人それぞれですが、そこから生じる「格差」については広く認識してもらう必要があります。データを見て、現実を確認してもらい、自分の考えを持ってほしいです」メッセージを込めて、澤柳さんは授業を締めくくりました。


 


最近ニュースなどで耳にするようになったジェンダーの問題ですが、周りの友人らとはなかなか話し合いにくいテーマでしょう。今回の授業は、ジェンダー不平等の構造を知れたこと、他の人と意見を共有できたことなど、生徒のみなさんにとって良い時間となったようです。この中から将来、ジェンダーの意識を持ってリーダーになる人がたくさん現れることを期待します。


 


■出前授業を受けた生徒さんたちのアンケートをご紹介します


・男女の固定概念にとらわれずに、お互いを想って生活することが大切だと思いました。

・やっぱりまだ表面上でしかジェンダー平等について考えられていないなと思った。考えたら行動に移していきたい。そのためには、色々な人との交流を増やしたい。

・ジェンダーの問題を考える上では、ジェンダー規範などの思い込みによって、扱いが変わったり、機会が与えられないなどを解決することは重要だと思いましたし、性の多様性などもお互いに認め合うことが解決への一歩になるかなと思いました。

・「ジェンダー」は誰にでも身近な存在であることに気づかされるとともに、日々の生活の中でどんなことが心がけられるのか考えていきたいと感じました。

・皆と共有したことで自分が考えもしなかった意見を知ることができて、見え方が変わった。

・男女の違いを考えると、偏見や固定概念が真っ先に浮かんできて、善悪関係なしに自分たちにある意識の強さに驚いた。

・書き出してみると、ジェンダーに対する固定観念がたくさんあることを実感した。

・自分自身、固定概念が強い部分はどこかしらにあるから、男性、女性どちらにとっても、よい社会となるように言葉で交し合うだけでなく、行動したいと思った。(力仕事は男子にまかせっきりにしないで、できる範囲で自分たちも率先して行うなど)