実施報告

長野の私たちから世界を変える、はじめかた。

団体名: NAGANO SDGs PROJECT×講談社FRaU×信州大学地域参画プロジェクトCHANGE

開催概要

開催期間:

2022年8月9日(火)

NAGANO SDGs PROJECT×FRaU SDGs×信州大学地域参画プロジェクトCHANGE 「長野の私たちから世界を変える、はじめかた。」を開催しました!

掲載日:2024年12月26日

日本で初めて全面的にSDGsを取り上げた女性誌・講談社『FRaU』。SDGs特集号は以降定期的に発行され、私たち読者にさまざまな問いを投げかけています。


今回は、そんなFRaU編集部とNAGANO SDGs PROJECTと信州大学参画プロジェクトCHANGEがタッグを組み、Z世代と「ジェンダー平等」についてのシンポジウムを開催。「同世代がジェンダーについてどう思っているのか知りたい」「自分の考えを伝えたい」「意見交換をしたい」という高校生・大学生・社会人の皆さんが集まってくれました。


 


テーマは4つ。「参加者全員の意見を大切に、未来をよりよくできるアイデアを求めること」を意識しながら、登壇したパネリスト10名によりディスカッションスタートです。


テーマ1)「性別による制限」を感じたことがあるか


テーマ2)どうしたら性別による制限が解消されるのか


テーマ3)自分たちが幸せであるために必要な物事は何か、何ができるか


テーマ4)社会や大人に言いたいこと


 


 


テーマ1)「性別による制限」を感じたことがあるか


 


パネリストからは、大きく分けて以下の意見が上がりました。



  • 学校の制服による男女の明確な区別が、ジェンダーに対する固定観念を育てていると感じる

  • 男性は理系や工学系、女性は看護や福祉系など進学先や就職先の男女比率から「職業ごとの男女の偏見」を感じる

  • 女性にとってはライフイベントとキャリアの両立が難しいと感じる


 


私たちが幼いころから家庭や学校、マスコミなどから植え付けられてきた「男性はこう、女性はこう」という決めつけのような価値観は、大人になってなお私たちの人生を縛り付け、「生きづらさ」を生む要因となっています。一方で、自分なりの男性・女性に対する価値観があっても、それはそれで良いのではないか、という意見も。「自分自身の価値観」や「どのように人生を過ごしたいか」という考えを大切にしながらも、それを「相手に押し付けない配慮」の重要性が叫ばれました。


 


 


テーマ2)どうしたら性別による制限が解消されるのか


 


パネリストからは以下のような解決策が提案されました。



  • 性別に関わらず着られる制服作りや、多様なジェンダーを受け入れられる学校の体制の整備

  • 「男性は働き手」「女性は家事、育児、介護役」といった固定観念を取り去る

  • 法律で男女の機会平等(すべての人を平等に扱うこと)を義務付ける

  • 小学生からジェンダーについて教育を行い、意識の変容を行う


 


パネリストの梅野さんが在学する長野日本大学高等学校では、卒業生の女子生徒が「本当はスカートを履きたくなかった」と呟いたことをきっかけに、生徒や保護者も参加する「新制服プロジェクト」を立ち上げ、今年度より長野県内初の「ジェンダーレス制服」を採用。ブレザーのボタンは右前と左前どちらにも対応、男女関係なくスラックスかスカートを選択する事が可能です。


このテーマの中では、こういった「学校の取り組み」や「幼少期からのジェンダー教育」の必要性が大きく取り上げられました。その中で、清泉女学院大学3年の黒岩さんは、「私が育った家庭では父と祖父はずっと座っていて、母が動くのが当たり前だった。だから私もそれが普通だと思っていた。教育はもちろん、親の姿もすごく大切」と話してくれました。


ジェンダーについての話題の中では、「『男らしさ』、『女らしさ』といった固定観念」が問題視されがちです。しかし、「母親が自ら望んで専業主婦を選択した」という家庭環境で育った信州大学1年の関さんは、「『女性が専業主婦になるという選択』は、必ずしも『ジェンダーバイアスによる制限』とは限らないのではないか。女性が男性について行くという選択肢だって、あってもいいはず」と言います。


その意見を受け、信州大学1年の武田さんは「私の父は、母の希望で外国から来日した。多様な実例が増えれば、さまざまな選択肢がある事が当たり前になるのではないか」と、自らの見解を述べました。


 


 


テーマ3)自分たちが幸せであるために必要な物事は何か、何ができるか


 


このテーマでは、パネリストがそれぞれの「大切にしている考え」を述べました。一部をご紹介します。



  • 真の男女平等を実現するため、偏見を口に出さない

  • 社会にどうなってほしいかを発信する

  • 自分自身も偏見や壁を作らずフラットに考える

  • 例えば誰がどんな服を着てもいいような、性別にとらわれない社会をつくる

  • 多様性を認め合う

  • 自分と違う世代の価値観に歩み寄る

  • 職場での差別や偏見をなくす

  • 将来教師になって、性別による制限を壊していく

  • 将来弁護士になって、世間の「無言の圧力」に苦しむ女性を救う

  • 個性を認め合い、尊重していく


 


 


テーマ4)社会や大人に言いたいこと


 


このテーマでは、リスナーとして参加してくれていた会場の皆さんから、たくさんの意見を頂戴しました。一部をご紹介します。



  • ガールスカウトに所属していると、「まわりからは反対されたけど、私はこの道を・・・」と女性が体験談を語る場面が多くある。しかし、そもそもまわりが誰かの人生を制限するって、おかしくないか?

  • 「スカートを履きたい」と悩む男性が、親から「世間が許すわけがない」と言われたという話をSNSで見た。許していないのは、世間ではなくあなた(親)の方では?

  • 自分の名前には、男性にしては珍しく「愛」という漢字が入っているが、素晴らしい意味を持つ名前なので誇りに思っている。性別に縛られずに名前をつけてあげてほしい

  • 男性が保育士になると「女児をいやらしい目で見るに違いない」と決めつけられがち。同じ教育者なのにかわいそう

  • 気遣いができたり、清潔にしていたりすることを、なぜ「女子力」って呼ぶんだろう

  • ジェンダーについての話題はタレントやモデル、ファッションカルチャーなど華々しい部分ばかり取り上げられているように感じるが、もっと身近で弱い部分にフィーチャーしたい


 


これらの意見に対し、FRaU編集部やNAGANO SDGs PROJECTの「大人たち」からさまざまな感想や意見が出ました。


 



  • 我々の頃は、ライフプランやライフイベントを考える必要が無かったので、Z世代の感覚は素晴らしいと思う

  • ジェンダー課題においては、根本的に「話し合い」が足りないのだと思う。話し合いは、いくつもある答えにたどり着くために必要なもの

  • 「大人世代」と「Z世代」両方の意見を聞けたのが今後の財産になった

  • ディスカッションはもちろん、司会者の聞き方が優しくてよかった。みんなが優しい社会になるといいね


 


自らの考えや、今までの経験を赤裸々に語り合った今回のシンポジウム。Z世代の意見を受けて、FRaU SDGs編集長の関さんは「SDGsはみんなで取り組んでいくこと。大人の経験と、子どもの若さや柔軟さはどちらも大切ですね」と会を締めくくりました。


自分が今感じていることや、変えていきたいことを発信する。自分の価値観だけで物事を進めず、相手の話をしっかり聞く。こういった「価値観のすり合わせ」の積み重ねが、ジェンダー問題を解決に導くのではないかと感じられました。


 


ご参加くださった皆さん、本当にありがとうございました!


 


<参加校・団体>


信州大学、清泉女学院大学、文化学園長野高等学校、佐久長聖高等学校、長野日本大学高等学校、長野清泉女学院高等学校


信州大学地域参画プロジェクトCHANGE、ガールスカウト長野県連盟、学び舎かなえ