先生が学ぶSDGsセミナー
実施報告
無 料団体名: 特定非営利活動法人 NIED・国際理解教育センター
世界が共通に掲げた目標であるSDGsについて、その内容や背景や特徴を理解し、目標達成に必要なものと教育にできることを体験的に学ぶ3回シリーズ。テーマについて学ぶだけではなく、「人の行動変容を支える教育手法」「参加型プログラムの作り方」「ファシリテーションのポイント」なども扱う。社会は見ているだけでは変わらないし、社会課題は知っているだけでは解決しない。第1回は、COVID-19禍の渦中にある社会をふりかえり、社会課題と社会参画と参加型教育の関連性について学ぶ。
■今後のセミナー開催予定
第2回:9月27日(日)
第3回:11月15日(日)に開催予定!
※第3回へのご参加は第1回、第2回のどちらかに参加された方に限ります。
開催期間:
2020年8月5日(水)13:00~16:00
会場:
信濃毎日新聞 長野本社2F 講堂
定員:
30名
掲載日:2020年08月05日
8月5日(水)、学校の先生など教育関係者向けの公開講座が信濃毎日新聞長野本社にて開催されました。講師は特定非営利活動法人 NIED・国際理解教育センターのファシリテーター・伊沢令子さんです。
対面での公開講座は約5カ月ぶり。参加者の皆さまにもご協力いただき、マスク着用、検温や消毒・換気など感染対策を徹底したうえで開催しました。
この講座で目指すのは、「SDGsについての教育」から「SDGsのための教育」。
SDGsを単に知っているだけでなく、SDGs実現のために行動する人を作っていくためにはどんな学びが必要か―その考え方や手法を、子どもたちに教える立場である先生方に知ってもらうことが目的です。
伊沢さんには、「そうだったんだ」という気づきを行動につなげるための教育手法や参加型プログラムの作り方、そこでのファシリテーションのポイントなどを計3回の講座で教えていただく予定です。
第1回は、「参加型教育とはどんなものか」皆さんに体験してもらいながら、社会が抱える課題やSDGsについて、ワークを通して理解を深めていきます。
30名の参加者の皆さんは、まず初対面の5人一組のグループでテーブルを囲みました。
同じ先生とはいえ幅広い年代が集まり、最初は緊張感が漂う会場でしたが、伊沢さんは「緊張感を楽しくブレイクしながら進めていきたい」と語り、まずは全員で名札をつくることに。本名に加え「こう呼ばれたい!」というニックネームをそれぞれ書いていきます(伊沢さんのニックネームは「れいちぇる」でした!)。
「参加型の学びのためには、『対等な立場』で安心して過ごせる場所づくりが大切で、それがファシリテーターの最初の役割」と伊沢さん。年齢・経験・立場などから離れ、お互いに呼んで欲しい名前をアピールし、尊重し合う―『対等な立場』に立ってこそ互いの知恵を安心して出し合うことができ、豊かに学び合うことができるそうです。
名札ができたところで、まずはアイスブレイキング(ウォーミングアップ)の時間がとられました。皆で動いて、しゃべることで「何を言っても大丈夫な場所なんだ!」と感じてもらうことが狙いです。
まず一つ目は「私は誰でしょう」ゲーム。背中に、動物や野菜など違う物の名前が書かれた紙を貼り、会場を回りながら一人につき一問質問することで、自分が誰なのか当てるというゲームです。
「私は生きてますか?」「食べ物ですか?」「野菜ですか?」「どんな色ですか?」「硬いですか?」質問を重ねるごとに一人一人の表情がほぐれていき、会場全体に活気が生まれていきました。全員が正解し、ゲームが終わっても会場の雰囲気は温まったまま。最初の緊張感はすっかりなくなっていたのが印象的でした。
その後は、グループに分かれての自己紹介タイム。「安心感のある、対等性のある場所」ができたら、次は「じっくり話ができる関係性を築く」ために互いの理解を深める時間です。紙に自分の特徴を4つ書き、それをもとにグループ内で自己紹介をするのですが、4つのうち1つはあえて嘘。グループの皆でどれが嘘なのか予想しました。そうすることでその人に対しての関心が高まり、それが理解につながるのだそうです。何かを理解して欲しい時には、物事や他者に対してまずは関心をもってもらえるような「工夫」が大切だと伊沢さんは解説してくれました。
互いの理解が深まったところで、次に「コロナ禍」での感情を振り返りました。
新型コロナウイルスにまつわるニュースを見てどんな気持ちか、「悲しい」「励まされる」「怒っている」「ありがたい」「その他(自由に記入)」などから自分の気持ちに近いものを3つ選び、その理由も含めグループ内で発表し合いました。それを踏まえ、次はグループで話し合い、感じたことや気付いたこと、共通点などわかったことをまとめ、全体に発表しました。
「参加型の学びの場では、考えや知識(どう考える?)だけでなく、それぞれの気持ちや感情(どう感じた?)を『共有』することが、互いの共感や共働へのモチベーションにつながります。さらに、個人で発表して終わりでなく、みんなで話したことを通して、そこから何が言えるかまとめること(自由に発散して、民主的に収束すること)を繰り返すことでその日の狙いを達成していく―というのがワークショップの特徴。関心や課題を共有することで、協力が生まれてくるんですよ」
ワークを進めながらその狙いや効果を説明してくれる伊沢さんの言葉に、「なるほど」とうなずきながら、皆さん実感を持って理解できている様子でした。
ここで前半が終了。休憩をはさみ、いよいよ後半はSDGsに関する講義です。
SDGsについて、伊沢さんはその背景などを解説した後でこう付け加えました
「まずはSDGsを『知ること』そして、それが他人事でなく自分にも関わることだと『気付く』こと。そして、自分に何ができるか『行動すること』、それをつなぐのがSDGsのための教育です」
2030年まであと10年。知って、気づいて、行動する人材を育てるにはどうしたらいいか、グループのメンバーを少しずつ変えながら、さらにワークを通して学んでいきました。
「17のゴールについて素早く学ぶためのアクティビティ」では、17のゴールのうちどれか1つについて書かれた子供向けの資料が1人1人に配られました。これを数分で読み解き、代表の17名が20~30秒で要約して伝えました。こうすることで、自分で全部調べなくても、皆で17のゴールについて短時間で共有し、「知る」ことができました。
次は17の目標についての日本と世界の現状を数値で見る資料を読み、一番印象に残ったことと感想をグループで共有。世界の状況だけでなく日本の現状も知ることで、自分にも関わりがあることだと「気づく」ことができました。
そして最後のワークでは、目標達成のために現状とのギャップをどう埋めるかを考えました。
まず17のゴールのうち、グループ内で関心の高い目標を一つ選びます。そして、ゴール実現に役立つことを模造紙の右側に、阻むものを左側に、対比する形で意見を出し合い、どんどんと記入していきました。途中、課題解決のために実際に世の中で動き出しているアイデアも付け加えたり、模造紙を他のチームと交換し、いいと思うものに印をつけ合ったりもしました。
振り返りとして、SDGsの目標達成のために「自分がやろうと思うこと」を1つ、SDGsのための「教育の担い手としてやろうと思うこと」を2つ考え、グループで共有したところで本日のワークは終了。伊沢さんは、「変化は一人からしか始まらない、それを積み重ねていくことで、いつかオセロのように劇的な変化が起きることを信じる。そのために、宣言した1個を確実に実行し、他人にもつなげていくことが大事」という言葉で今回の講座を締めくくりました。
学びあいの場を活性化する手法や、SDGsを「知って」「気づいて」「行動する」という一連の流れを、体験を通して学んだ今回の講座。参加者の皆さんからは「学校でも取り組んでいるけれど、今回ひとつの目標についてじっくり考えられてよかった。自分でも深めていきたい」「何から始めたらいいかわからなかったが、様々な手法を学べてよかった」といった感想が寄せられました。未来を担う力を育むためのヒントがぎゅっと詰まった3時間でした。
今回はまだホップの段階。ステップ、ジャンプへと続く残りの講座もお楽しみに。