先生が学ぶSDGsセミナー
実施報告
無 料団体名: 特定非営利活動法人 NIED・国際理解教育センター
世界が共通に掲げた目標であるSDGsについて、その内容や背景を理解し、目標達成に必要なものと教育にできることを体験的に学ぶ3回シリーズの最終回。SDGsについて知るだけではなく、SDGsのために行動する人々を育むために、「参加型のプログラムの作り方」と「ファシリテーション」について体験的に学びます。実際にプログラムを作りファシリテートしてみる!「為すことによって学ぶ」最終回です。
参加条件:第1回か第2回に参加した方を対象としています。最終回だけの受講はできません。
開催期間:
2020年11月15日(日)10:00~16:00
受付締切:
定員になり次第締切
会場:
信濃毎日新聞 長野本社2F 講堂
定員:
30名
掲載日:2020年11月15日
11月15日(日)、特定非営利活動法人 NIED・国際理解教育センターのファシリテーター・伊沢令子さん(以下「れいちぇる」)を講師に迎え、第3回目の教育関係者向けセミナーが開催されました。(第2回目のレポートはコチラhttps://www.naganosdgs.jp/learn/open_lecture/20200927-2.html)
最終回である第3回のテーマは「SDGsとESDとアクティブ・ラーニング ―学びをアクティブにする方法―」。持続可能な未来を創るために「知り、気づき、行動できる人を育てること」を目的とする「ESD」と、「参加型教育」のプログラムの作り方とファシリテーションのポイントについて学びます。
セミナーは17名でスタート。第1回・第2回のいずれかに参加した方が対象です。3回目ともなると、セミナー恒例のアイスブレーキングも慣れたもの。皆さん積極的に、楽しそうにコミュニケーションを取り合います。
会場の空気が暖まったところで、最後の学びが始まります。
今回は参加者の「気づき」を「行動」へとつなぎ、価値観や行動の変容を促すアプローチの方法や、学びをアクティブにする参加型プログラムの作成、そしてプログラムの実践を通して、「価値観の教育」である「ESD」と「参加型教育」についての理解を深めます。
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「『発散』と『収束』で学びがより深まる。正解のない問いに頭を悩ませることに意味がある」とれいちぇる。「ねらいを達成するためのアプローチ」は2通りあると言います。
1つ目は「ギャップアプローチ」▼
【現状把握→影響予測→原因探求→手立ての検討】の4つの手順で課題解決の方法を考えます。課題の背景に丁寧にアプローチしていくことで、大規模でどこか他人事に感じていた問題に「自分もかかわっている」のだということを、学習者に自覚してもらいやすい手法だと言えます。
2つ目は「ポジティブアプローチ」▼
理想の未来に対して、「どうしたら実現できるか」アイデアを出し合う手法です。大切なのは、今ある「課題」や「足りないもの」ではなく、「今あるものや自分のウリ、組織の強み」に目を向けて、とにかく楽しく肯定的に話し合うこと!どんなに斬新なアイデアでもOKです。ポジティブな空気感が、未来への期待感とモチベーションを高めてくれます。
今回はポジティブアプローチの一例として「ワールドカフェ」をダイジェストで体験しました。方法は以下の通りです。
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1)4~5人のグループになり、カフェでおしゃべりするような感覚で、テーマについて話し合います。
2)「いいな」と思ったアイデアやキーワードは、模造紙に各自書き残します。(イラストもOK)
3)一定の時間が経ったら、各グループ「カフェマスター」役を残し、メンバーをシャッフルします。
4)「カフェマスター」は、新たなグループのメンバーに先程までの話し合いの内容を説明します。
5)新たなグループで、前のグループを超えるようなアイデアを生み出し、3ラウンドほど繰り返します。
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メンバーをこのようにシャッフルすることで、あたかも参加者全員と話したような気持ちになり、多様な意見や知識を共有する事ができるこの手法。今回はSDGsの17の目標を、①パートナーシップ、➁豊かさ、③平和、④地球、⑤人間という「5つのP」に分けグ5グループで分担し、それぞれのテーマに対して、「ビジョンを実現するためのアイデア」を話し合いました。
⑤人間をテーマにしていたグループでは「学校の再構築」について話が盛り上がり、「地域が丸ごと学校」で、「誰もが生徒・誰もが先生」の「小学100年生」というプロジェクトを発案。他のグループでも、参加者の皆さんが各々の知識を持ち寄り、組み合わせて話を膨らませていく姿が印象的でした。
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次に「価値観の変容」について考えていきます。
「価値観が変われば、行動が変わります」―価値観は、人の行動の指針となる「その人が大切にしている考え方」。れいちぇる自身今から思えば信じられないことに、学生の頃は「安くて長持ちする食品を!」という選択基準の元、保存料が入っていることを確かめてハムなどを買っていたそう。しかし、さまざまな本や人、環境教育との出会いを経て、「人にも環境にも優しいものを!」と選択基準が変化していったと言います。
参加者の皆さんも、「今あるどんな考え方がどう変われば持続可能な社会づくりに役立つのか?」を探し、
・傷の無いきれいな食べ物が食べたい → 廃棄を減らすため、不揃いな野菜も買う・食べる
・自分が良ければいい → みんなが幸せ
・欲しいもの → 長持ちするもの
・人間様が一番偉い → 他の動植物、生態系あっての人間
など、さまざまな「変えていきたい価値観」を模造紙に書き出します。中には、
・あしたやろう → ばかやろう という意見もありみんなの笑いを取っていました。
このアクティビティで、ESDにおいては、まず「持続可能な未来に役立つ価値観を育てていくこと」と、「知る、考える、行動する」をつなぎ、それぞれの行動を変えていくことが大切だということが分かりました。
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お昼休憩をはさみ、午後はいよいよ参加型プログラムの作成と実践へ!
以下の0~5のステップで、1人ひとりプログラムを作っていきました。
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0)テーマを決める:【持続可能な社会に近づくために、○○が必要/○○を解決しなければならない】
この「○○」に入るものを考え、テーマとして設定する。
1)テーマを理解する:テーマからイメージできることを、ブレーンストーミングで書き出す。
2)自分の「ねがい」を見極める:学習者に「知ってほしいこと」「行動してほしいこと」をそれぞれ書き出す。
3)「ねらい」を定める:「ねがい」の中から、プログラムの目標を設定する。
4)ストーリーラインを作る:2)で書き出したものを起承転結のストーリーに組み替える。
5)起承転結に「アクティビティ※」を当てはめる:
※アクティビティとは「目的」「伝えたい内容」「伝える手法」が合わさったもののこと
【目的】○○について知りor考えor気づくために
【内容】△△といった事柄や情報を
【手法】□□の参加型方法を提供し、あてはめて考えてみる
ストーリーに沿ってアクティビティ(「○○」+「△△」+「□□」)を考えればプログラムのできあがり。
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・・・なかなか難しそうですが、「案ずるより産むが易し!」というれいちぇるの一声で、皆さん一斉にプログラムを作り始めます。
各自のプログラムが完成したら、まずはグループ内で発表。その中からグループの代表案を選出し、みんなで協力しながらよりよくブラッシュアップしていきます。グループごと全参加者に向けて「プログラムの概要の説明」と、「参加型アクティビティ」の実践を行いました。各グループの発表を簡単にご紹介します。
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【グループ①】
テーマ:コミュニケーション / 対象 :教職員
内容 :自分自身のコミュニケーションを振り返り、よりよい関係を築くために何ができるか考える。
参加型アクティビティ:ペアをつくり、1分間相手を褒めちぎる。
【グループ➁】
テーマ:地球温暖化 / 対象:高校生
内容 :地球温暖化の現状・影響・原因を知り、自分達にできる対策を考える。
参加型アクティビティ:「地球の気温が2℃上がった」際の良い側面・悪い側面を書き出す。
【グループ③】
テーマ:平和・豊かさ / 対象:中学生・住職など葬儀に関わる人々
内容 :途上国の現状を知ること、全生物が「地球という墓」に入ると実感することを通して、命の重さは皆同じだということに気づく。
参加型アクティビティ:「豊かさ」に関するイラストのイラストリレーを行う。
【グループ④】
テーマ:ライフプラン / 対象:中学生
内容 :「自分が家を買うなら」という切り口から、自分自身の将来・理想の生き方について考える。
参加型アクティビティ:理想の家を考えて、イラストに描いてみる。
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セミナー内の短い時間で準備したにもかかわらず、さすがは普段から教鞭を執っている先生方。
アドリブ力抜群、ユーモアたっぷりの楽しい発表が続きました。
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最後に考えるのは、「より良い 参加型プログラム / ファシリテーター は○○だ!」。
れいちぇるが所属するNIEDがファシリテーターとして大切にしている考え方は「参加者を信じる」「自分を信じる」「参加型を信じる」ことだそう。参加者の皆さんからも、「自由に話せる」「仲良くなれる」「学習者に寄り添う」「慣れ」・・・と、セミナーの中で見つけた答えが次々と飛び出します。「眠れない!」と答えた方が、れいちぇるから「寝かせないわよ~~~」と突っ込まれる場面も・・・(笑)。
セミナー最終回は、たくさんの笑い声に包まれながら幕を閉じました。
セミナー終わりの会場からは、別れを惜しむ声や、「来年はいつやるのでしょう」といった声がちらほら。
れいちぇるは言います。「聞いたことは忘れる。見たことは覚えている。体験したことは使える」―参加された皆さんも、「参加型プログラム」の大きな力を感じたのではないでしょうか。今回のセミナーにとどまらず、多くの教育現場で「参加型」の魅力を発信していただければと思います。