先生が学ぶSDGsセミナー
実施報告
無 料団体名: NPO法人NIED・国際理解教育センター
人権、環境、平和などに関わる17ゴールからなるSDGsを達成するには1人ひとりの行動が不可欠です。それぞれの課題の現状を把握し、原因や背景を探り、課題解決やビジョン達成に必要なものかがわかり・できるようになれば、現状を変えることができます。人権を守るとは自分が何をすることか、持続可能な環境を創るとは自分がどう行動することか、SDGsを自分事とし、日常の実際の行動につなげるための学びの場と方法を提供します。
開催期間:
8月10日(火) 10:00-17:00(6h) ※お昼休憩1時間あり
受付締切:
定員になり次第締切
会場:
松本市勤労者福祉センター 3F
受講料:
無料
定員:
30名
備考:
【参加対象】教育関係者
掲載日:2024年12月26日
SDGsを達成するには、1人ひとりの行動が不可欠です。それぞれの課題の現状を把握し、原因や背景を探り、課題解決やビジョン達成に必要なものを把握し、行動を変えることができれば、現状を変えることができます。何をすれば「人権」が守れるのか。どう行動すれば、「持続可能な環境」を創れるのか。「SDGsを自分事とし、日常の実際の行動につなげるための学び方」を学びます。
【開催概要】
開催期間 :2021年8月10日(火)10:00〜17:00
会場 :松本市勤労者福祉センター 3F
先生が学ぶSDGsセミナー
SDGsを行動に!持続可能な未来の鍵を握る「環境×人権」のための教育
8月10日(火)、特定非営利活動法人 NIED・国際理解教育センターのファシリテーター・伊沢令子さん(以下「れいちぇる」)を講師に迎え、第1回目に続く教育関係者向けセミナーが開催されました。
※参加者の皆さまにご協力いただき、マスク着用、検温や消毒・換気など感染対策を徹底しました
「先生が学ぶSDGsセミナー」は、2021年度2回目。
1回目から続けてご参加いただいた方も多くいらっしゃいました。
今回は大きなテーマとして「人権」を取り上げ、主に開発途上国の貧困問題について考えます。
セミナーのねらい———————
*社会の現状をふりかえり、社会課題を確認し、その影響や原因、自分との関わりを探る
*生物が生きる土台である環境と、人として生きる基本である人権が、社会の持続可能性の鍵であることを理解する
*「知り、考え、気づく」と「気づき、考え、行動する」をつなぎ人の行動変容を支える参加型のポイントを学び持ち帰る
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れいちぇるは、参加型には「3つの心構え」があると言います。
1つめは「協力」、2つめは「尊重」、3つめは「信頼(守秘)」。
参加型教育には、参加者が「ここは安心して話ができる場だ」と感じられる空間づくりが必要不可欠。
以上の3つを踏まえて、参加者一人ひとり「自分自身の心がけ」を決め、心に留めてワークに臨みます。
最初のワークは、「社会が抱える課題は何か」を個人で考え、グループで模造紙にまとめていくというもの。
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①「これは問題だ!」「解決しないと困る」「変えたい!」「変わるといいな」と思うことを自由に付箋に書き出す(ブレインストーミング)
②それらの付箋を「日本の課題」と「世界の課題」に分類しながら共有する(対比表)
③似た内容の付箋をまとめ、タイトルをつける。関連する項目同士は線でつなぐ(KJ法)
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「この課題とこの課題、この課題もつながりますね」「というかこの課題、全部に影響していますよね・・・!」
付箋をつけ足したり、並べ方を変えたり、メンバー同士相談しながら作業を進めていきます。
女性が集まるチームでは「ジェンダー平等」に関する課題が多く出るなど、グループごとに特徴のある模造紙が仕上がりました。
午前の部では、
・SDGsを細分化することで、自分にとってより身近に感じながら考えることができた
・いろいろな人と課題について考えることで、新しい発見がある!
などの感想が出ました。
お昼休憩をはさみ、午後の部です!
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午後の部最初の課題は、【世界のSOSに耳を傾けよう】という小学生向けのプログラム。
本来は90分×3コマの授業ですが、今回はセミナーバージョンに短縮して体験しました。
まずは「クイズ」を通じて、多様な世界の面白やその国の「誇りと課題」について知り、なぜ「他国のSOSに耳を傾けるのか」を学びました。
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①グループに分かれ、それぞれチャド・クロアチア・ガーナ・フィリピン・ベリーズ・インドネシアを担当
②グループごと、担当の国の「魅力&課題」をテーマにしたクイズに答える
③クイズを通して分かった「国のユニークなところ」、「面白いところ」を参加者全員の前で1分半プレゼン
④各国の魅力が分かったところで、それぞれの国の課題を発表
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このプログラムのポイントは、「国の課題から紹介しない」ところ。「課題」から入ると、「開発途上国はかわいそうな国」「日本でよかった」という気持ちなりがちですが、各国の「魅力」に触れることから入れば、よりその国への親近感を持った状態で「課題」を受け止めることができる、ということです。
「どんな国にもそれぞれのいいところがある。多様だから、豊かなんです」とれいちぇるは言います。
「他国の課題を自分事にする」ための手法は、このようなクイズのほかにも
・ロールプレイ:課題を抱えるキャラクターになりきり演じることで、他者に共感を寄せる
・鎖国ゲーム:日本が他国との関係を一切絶ったらどうなるか考えることで、世界とのつながりに気づく
・影響予測:課題を放置するとどうなるか予想することで、問題と自分とのつながりや課題解決の必要性を確認する
など、たくさんあるそうです。
ここからは、「貧困」をテーマに解決への手立てを考えていくプロセスを体験します。
まずは「貧困とは何か」。貧困によって起きること・困ることを、派生図を使って考えました。
れいちぇるが「貧困で起こる最悪な帰結は?」と呼びかけると、各グループからは「①うつ②犯罪③死」「①戦争②病気③貧困の連鎖」「①生きる気力がなくなる②人身売買」などの意見が。
「最悪の帰結が「死」である貧困は、重大な人権侵害であり、自分自身の生存権が保障されなければ、社会的行動に移れない。持続可能な社会を実現するためには、【GOAL1:貧困をなくそう】の達成が不可欠なんです」とれいちぇるは訴えます。
では、なぜ貧困に陥ってしまうのでしょうか?
「飢え」をテーマにした複数の写真を見て、「なぜこの人々は飢えているのか?」その背景や原因を予測した後、解説を読みました。
戦争、干ばつ、障がい、シングルマザー、幼児婚、教育不足、制度の不備など、貧困の原因は多様です。
次に、先進国と途上国の格差を生み出している世界経済の「構造」を知るために、自分が『儲け第一主義」『自社至上主義』の企業の経営者だったと仮定し、途上国との取引を通して自社が最大の利潤を上げるための悪巧みを考える、というワークをしました。
参加者からは、
・途上国の土地を安く買い、工場を作り、低賃金で管理者や労働者を現地で雇う。
・文字が読めない人に不平等な契約書を書かせる
・土地の開発に投資、現地には還元しない
・途上国の原材料を安く買いたたき、安い賃金で加工し、先進国で高く売る
など、悪~いアイデアがわんさか!
資本主義や自由競争というシステムの中で、経済至上・自国(自社)至上主義に傾くと、貧富の格差が生まれます。構造によって作り出される貧困のことを「構造的貧困」と言います。構造的貧困は問題を作り出している経済構造を変えることで解決できる貧困です。
「これだけ貧困の原因や搾取の構造が分かったいうことは、解決策も見つけられるはず!」とれいちぇる。
次は貧困の特徴である「悪循環」について考え、続いて「貧困のループ」を断ち切る方法を考えました。
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①「食料が買えない」「読み書きができない」「病気になりやすい」など、貧困による様々な影響が書かれた12枚のカードのつながりを考え、ループするよう模造紙上に円形に並べる
②どうしたら影響の連鎖を断ち切ることができるのか、グループで意見を出し合う
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「食糧支援」「職業訓練」「学校建設」といった現在も行われている支援から、「納豆などの発酵食を広めて免疫力をアップ!」といった斬新なものまで、幅広い意見が集まりました。
最後のワークでは、【モロッコのムハンマドさん一家を救え!?】というストーリーから、これまでとは違う視点からの貧困解決について学びました。
物語のあらすじ———————–
小麦を育てて生計を立てているものの、子ども全員を学校に行かせられるだけの収入がなく、このままでは生活すらも危ういと悩むムハンマドさん一家。さて、どうしたらよいのでしょう?
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ムハンマドさん一家を救う方法を、グループで話し合いました。
・出稼ぎや内職など、家族みんなで力を合わせて働く
・小麦でパンを作って、付加価値を付けて売る
など、さまざまな意見が挙げられる中、
・YouTubeでこの現状を発信して、著名なYouTuberになる!
といった大胆なアイデアも!
実はこのストーリーはノンフィクション。実際にムハンマドさん一家を救ったのは、【マイクロクレジット】という低金利無担保融資でした。お母さんがマイクロクレジットを活用し、以前から得意だった刺繍を販売することで危機から脱出できたのでした。
世界では、マイクロクレジットのほか
・フェアトレード:原料・製品を適正価格で継続的に取引し、生産者・労働者の環境改善を目指す取り組み
・ビッグイシュー:ホームレス状態の方々の「働く場」をつくる試み
といった、収入を得ることで貧困から脱するための「仕事づくり」の取り組みがなされています。
ビッグイシューやフェアトレード商品を購入する、児童労働によって作られている商品のボイコット、支援活動をしている団体に寄付をする、支援活動に参加する、貧困や支援に関する情報を発信するなどの行動も、貧困を断ち切るための立派なアクションの一つになるのです。
「自分には何ができそう?」とれいちぇるから聞かれると、参加者の皆さんからは、
・まずは生徒に伝える
・フェアトレードを意識して買い物する
・「いいな」と思う活動を支援する などの声が上がりました。
「何をすればいいかが分かったら、どんなに小さなことでもいいから始めてみてほしい」と、れいちぇるは言います。
貧困の現状を「知り」、それが身近な問題だと「気づき」、未来に向けて「行動する」。このセミナーを通して「行動変容」を実感できたのではないでしょうか。