NAGANO SDGs PROJECT主催
実施報告
団体名: ラマ色コラボ
掲載日:2024年12月21日
7月13日(水)信州大学附属中学校で出前授業を実施しました。
・講演:「この国に生まれこの国で生きる」ネパールとオンライン交流会
・講師:ラマ色コラボ 北原照美 氏
・受講生:信州大学附属中学校1年生29名
信州大学附属中学校では、7月12日~15日までの4日間を「ヒューマンウィーク」と称し、全校生徒が総合学習を行う期間として、学年・クラスでさまざまなことに取り組んでいます。今回、教室に集まったのは、SDGs目標の中でも「医療・福祉・教育」に大きな関心を持つ1年生の生徒たち29人。事前に、長野県・駒ケ根市の友好都市であるネパール・ポカラ市での母子保健プロジェクトの様子を動画で学習しており、北原さんをはじめ、ネパールの病院スタッフの「生の声」を実際に聞くことができる授業を、とても楽しみにしているようでした。
北原さんと生徒たちの「ナマステー!」と元気な挨拶から始まった授業。突然、「メロ ナーム テルミキタハラ ホ タパインコ ナーム ケホ?」と北原さんは聞きなれない言語で話し始め、さらに男子生徒に何か質問しました。すると、「メロ ナーム アキラナカジョウ ホ」と男子生徒が流暢に答えたので、教室内は拍手喝采!その後、ほかの生徒たちもハキハキと名前を言ったり年齢を答えたりしていて、北原さんも吸収の早さに驚いていました。北原さんが話していたのはネパール語。なぜ生徒たちはすぐに状況を理解できたのか聞いてみると、「知っている英語の単語から推測ができた」とのこと。北原さん自身も、知らない言語が飛び交う外国で、時々知っている単語が出てくるからなんとかコミュニケーションがとれるのだといいます。そして何より、「この人は何を言いたいんだろう?」と思考を巡らせながらコミュニケーションをとり、お互いに分かり合おうとするおかげで、異国の地でも楽しく過ごせるのだそうです。「日々、知らないことがたくさんあると思うけど、何事にも関心を持って、”知ろう“という姿勢でいてもらえたらいいなと思います」と生徒さんたちに伝えました。
授業の前半は、実際に北原さんが途上国で生活をして感じた価値観の違いや体験談を、医療・福祉・教育のテーマに沿って話してくれました。
北原さんは、元々日本で幼稚園教諭をしており、幼稚園の長期休みなどにバックパッカーとして途上国にボランティアに行っていたそうです。そこで出会った人々の、家族や人を大切に想う姿に感銘を受けた北原さんは、「旅人としてではなく、人々と出会い豊かな気持ちになれる生活がしたい!」と青年海外協力隊に応募し、本格的に隊員として活動を始めました。
それから、モルディブ、ガーナ、ネパールとさまざまな国での活動を通して、日本に暮らす自分と途上国に暮らす人々との環境・価値観の違いを、身をもって感じたそうです。例えば、「子ども」に対する考え方について。ガーナで、現地スタッフのオリバーさんが自分の子どもが生まれたのに、1ヶ月も周囲に公表にしていなかったことに北原さんは疑問を持ったといいます。「なんでだと思う―?」という北原さんの問いに、生徒たちは「出産祝いをもらっても貧しくてお返しができないから、言わなかったんじゃないかな?」と予想。もちろんこの理由は一因として考えられますが、オリバーさんが放った言葉は「だって赤ちゃんは死んでしまうかもしれないだろ」というものでした。環境の劣悪さが原因で多くの命が亡くなっているという真実とそれが当たり前かのように発せられた言葉。北原さんは「とても衝撃を受けた出来事だった」と話してくれました。
現在、北原さんは、出身地である駒ケ根市の国際友好協力都市ネパールのポカラ市で、母子保健プロジェクトに携わっています。お母さんたちが安心・安全に赤ちゃんを産み、健康に育てていけるようにサポートし、「民際協力」と「民際交流」を大切に活動してきた結果、今、ポカラ市と駒ケ根市の間には確かな「絆」が生まれています。北原さんは、「地域にいながら、世界の誰かの役に立ち、喜んでくれる人がいるという幸せを創出でき、その幸せを相手に伝えることで相手も幸せになる。この幸せの循環が『みんなで幸せになろうプロジェクト』です」と教えてくれました。さまざまな国で国際協力活動を行ってきた北原さんの「生の声」を聞くことができた生徒たち。「言葉が分からなくても周りの人の優しさに助けられることもあるんだと思った」「途上国の状況を知れたので、何かためになることをしてみたい」「お母さんが元気に赤ちゃんを産めることは、途上国では当たり前ではないと知った」といった感想が聞かれました。
授業の後半は、ポカラ市の母子友好病院スタッフの「生の声」を聞く時間です。ZOOMを繋ぎ、生徒が「今、ネパールは何時ですか?」と英語で聞くと、「午前11時です」と返ってきました。教室の時計の針は午後2時15分を指していたので、時差は3時間15分。そんな時間と海を越えた交流会にサビタさん、ディキさん、シリジャナさん、スミトラさん、シャンカールさんの5人が参加してくれました。生徒たちは、冒頭で習った自己紹介をしてから、さっそく気になることを質問しました。
【質問1】病院の取り組みや特徴・強みを教えてください
ディキさん:産科でとても良いケアができていると思います。特に乳房ケアは、他の病院には全くないので優れている点です。そして、病院に清潔感があり、子どもたちへの接し方も丁寧であることが特徴だと思います。
【質問2】病院で働いていて、嬉しかったことや楽しかったことを教えてください。
シリジャナさん:患者さんが元気になって帰る姿を見るときが、一番嬉しいです。患者さんは、苦しい思いをして病院にやってくるので、「今日はどうされましたか?」と丁寧に聞きとり、適切なケアを施しています。
【質問3】今、病院にはどのような問題がありますか?また、その問題を踏まえて将来どのようになっていきたいですか?
スミトラさん:患者さんがいるのに医師がいない、麻酔ができる医師が常駐していない、ICUがないなど病院の機能がまだまだ足りていないので、そこが改善されていくと良いと思います。
シャンカールさん:田舎には医療施設が少なく、妊娠・出産に関する知識が乏しいので、新生児死亡率がとても高いです。解決には、正しい場所で正しい時間に医療が受けられる病院の増設など、政府の政策が重要になります。そして、私たちも引き続き啓発活動などを頑張っていきたいです。
生徒たちの質問に、丁寧に答えてくれた母子友好病院のスタッフたち。「ナマステ ダンニャバード!(ありがとう さようなら!)」とあいさつをしてお別れしました。話を聞いて日本の病院とは違う医療体制に驚きながらも、ネパールのことをもっと知ろうとする生徒たちが印象的でした。最後に、北原さんは「旅行でも、ボランティアでもいいし、オンライン交流でもいい。ぜひ世界中の『生の声』をたくさん見て、聞いてください!」と生徒たちに伝え、授業を締めくくりました。積極的に授業に取り組み、世界を知ろうとしていた生徒たちのこれからの行動が楽しみです。
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