NAGANO SDGs PROJECT主催

実施報告

ラマ色コラボ協力出前授業

団体名: ラマ色コラボ

開催概要

5月31日(火) 高遠高校で出前授業【世界がもし100人の村だったら】

掲載日:2024年11月21日

5月31日(火) 高遠高校で出前授業【世界がもし100人の村だったら】


授業:「世界がもし100人の村だったら」


講師:ラマ色コラボ 北原照美さん


参加者:長野県高遠高等学校2年生20名


 


長机といすが並ぶ一室に集まったのは、今回、北原さんの授業を選択した生徒20人。クラスが違う人もいるので、ウォーミングアップとして自己紹介からはじまりました。


 


【ワークショップ「世界がもし”20人”の村だったら」スタート!】


人種、経済、政治、宗教などについて世界全体を人口100人の村に縮小して説明し、世界中で大きな反響を集めた小文があります。前半の授業では、これを基にワークショップを展開します。


はじめに、20人の生徒さんたち一人ひとりが「役割カード」を引きました。そこには性別や年齢、居住地や母国語などの設定が書かれています。ここから実際に身体を動かしながら設定に沿ってワークに取り組み、現在の世界の様子や「なぜ今SDGsが注目されているのか」について、理解を深めていきます。


 



  • 世界の人口について知ろう!


北原さんの「世界は今、若年化?それれも高齢化?」という問いから、ワークが始まりました。配られた手元の役割カードに「子ども」と書かれている人は立つ、「大人」と書かれている人は床にしゃがむ、「お年寄り」と書かれている人は椅子に座るという指示が出されると、立っているのは5人、床にしゃがんでいるのは13人、椅子に座っているのは2人でした。これを「日本の場合」でやり直してみると立っているのは2人、しゃがんでいるのは12人、椅子に座っているのは6人と「高齢化が進みつつある」という結果になりました。これをアフリカに置き換えると、子ども10人、大人9人、お年寄り1人で圧倒的に子どもの割合が大きくなります。現在、世界人口は約78億人で、これからアジア・アフリカを中心にますます増加すると言われています。国によってなぜ、このような差が生まれているのでしょうか?先進国では、医療制度の発達による高齢化や、結婚・出産に対しての自由な価値観などが理由で少子化が進んでいるそうです。一方で、アフリカでは家族計画や妊娠についての知識や方法が少ない、医療が未発達のために寿命が短いなどがあり、暮らす環境の違いが垣間見えるものでした。


続いて、大陸単位で人口分布を見ていきます。北原さんから、「大陸ごとに分かれてみましょう!」と声がかかると、生徒さんたちは役割カードを見せ合いながら床や机のまわりに円をつくって集まり、5つの大陸グループができました。1番人数が多かったのはアジア。中国やインドなど人口が多い国が集まっている大陸です。アジアは11人、ヨーロッパは2人、北アメリカは1人、南アメリカは3人、アフリカも3人、そしてオセアニアは0人という結果になりました。


そして、北原さんは枚数が「二酸化炭素の排出量」を表す紙を、アジアの人たちには28.5枚、北アメリカの人たちには9枚、南アメリカの人たちには2枚、ヨーロッパの人たちには8枚、アフリカの人たちには2枚配りました。二酸化炭素の排出量が多い国は、人口に比例せず相当量を排出していて、この二酸化炭素が地球温暖化の一因となっています。普段、私たちが購入する衣類、スマホ、100円ショップ製品などの多くは、「世界の工場」と言われる中国で生産されており、その生産過程で多くの二酸化炭素が排出されているのです。「中国ダメじゃん!」と口にする生徒さんたちに、北原さんは私たちの生活とのつながりを説明し、「排出量が多い国を批判しがちですが、作られたものを使っているのは誰なのか、地球に危機をもたらしているのは、どこの国なのか。想像してみることが大事です」と呼びかけました。


 



  • 文字が読めるということ


次は、識字率についてワークに取り組みます。スライドに表示されたのはネパール語で「座ってください」を意味する文字。手元のカードを見て意味を理解し、行動に移せた人は17人で、残りの3人は立ったままでした。この3人は、20人という世界の中で「大人で字を読むことができない人」の割合を意味します。「字が読めない」ということが、何を引き起こすのか、この3人に寸劇をしてもらいました。(即興とは思えない名演技でした!)


 


〈ストーリー〉


主人公はネパールに暮らす3人家族。父と母は学校に行かれず、字を読むことができないので、生活することがやっとな低賃金で働いています。ある日、子供が病気になってしまい、両親は薬局に行きました。しかし、そこに人はおらず①~③のビンだけが置かれていました。3つのビンの中身は、①薬②飲料水③農薬。ビンには文字が書かれていますが、読むことができません。この中から、子供に買って帰るものを選んでください。


 


両親役の2人は悩んだ末に1つのビンを選択し、「父さんを信じろ!」と実際に子供に飲ませました。ひと口飲んだ瞬間、子供役の生徒は顔をしかめました。なんと、両親が飲ませたのは③農薬(実際に飲んだのは塩水)だったのです!


教育を受けられず字が読めないということは、バスに乗っても行き先がわからない、物の値段が分からないなど生活に大きな支障をきたすだけでなく、危険を認識できず命を落とす可能性もあると知れたワークでした。


 



  • 世界の富は分け合えるのか?


北原さんは生徒さんたちを4人ずつの5チームに分け、それぞれのチームに「世界の富の分布を表す個数」のチョコレートを配りました。チョコレートは全部で20個。どんな分配になるのでしょうか?


箱を開けた生徒さんたちからは「これしかないの!?」「もうちょっとほしいなぁ…」という声が続出!それもそのはず、4チームは、0.1個、2.2個、0.7個、0.5個とチームの人数にも満たない個数だったのですが、1チームだけ16.5個チョコレートが入っていたのです。私たちが暮らすこの世界には、全世界の全員に行き渡るほどの食糧があると言われていますが、このように平等に分配されていないのが現実という訳です。


ここで北原さんから「今日の授業で、みなさんが裕福な国・貧しい国に生まれたのはなぜだと思いますか?」と問いかけがありました。生徒のみなさんは「考えてみれば、なぜだろう…?」という雰囲気で、悩んでいる様子でした。まさにその悩む姿が正解で、私たちは皆、自分が生まれる国を選ぶことはできません。生まれた瞬間に大きく運命が決まり、貧しい国に生まれれば「なぜ苦しい思いをしなければいけないのか」という感情を抱きます。


こうした偶然性に気がつき、「平等」や「公正」に対して湧いてくるごく自然な感情を踏まえて「自分はどうしたいのかを考えることが大切」と北原さんは教えてくれました。


 


【私と世界のつながり】


授業の後半では、私たちの普段の生活と地球温暖化の関係について詳しく学びました。


私たちの生活に身近なスナック菓子や市販の揚げ物、シャンプーなどには「パーム油」が使用されています。このパーム油の原料であるパームヤシは、1年中栽培・収穫ができ、主にマレーシアやインドネシアの熱帯雨林・森林を伐採し、大規模農園が作られます。これが生態系の破壊を起こしたり、温暖化が進む一因となり、自然災害や気候変動による災害が発生し、私たちの生活へも影響が出てくるのです。


これから先、日本に限らず自然災害は間違いなく増えると言われています。その一因である地球温暖化の基をたどっていくと、私たちがいつも使用・飲食しているものに行きつくという真実を北原さんから教えてもらい、神妙な面持ちだった生徒さんたち。ここから何を感じ、何を思ったのでしょうか。


 


最後に、今回の授業で「生徒さんたちが考えたこと」「SDGsのためにこれから取り組んでいきたいこと」を発表してくれたので、ご紹介します。


 



  • ゲーム形式で、今世界に起きているさまざまなことを楽しく学ぶことができた。

  • 気候変動が起きないようにエアコンなど、エネルギーを使いすぎないようにしたい。

  • LGBTQの取り組みとして、身近な人たちにいたらまずは理解することから始めたい。

  • 世界には字が読めない人、貧しい人が多く、安心できる世界ではないと思った。たまに募金箱に寄付をしたり、これから仕事を頑張って社会に貢献したい。


 


世界にはさまざまな環境で暮らす人がいて、一見関わりが無いように見えても私たちの生活とつながっている部分は多いと知ることができた今回の授業。今回の生徒さんたちは、同じ地球に暮らす仲間としてお互いを意識し、まずは自分にできる行動を起こしていくことが、世界中すべての国、人が取り組む目標である「SDGs」につながることを学んだのではないでしょうか。


「ワークショップ版・世界がもし100人の村だったら」:教材制作 認定NPO法人 開発教育協会