NAGANO SDGs PROJECT主催

実施報告

JICA東京 長野デスク協力出前授業

団体名: JICA東京 長野デスク

開催概要

2022年10月20日(木)松本筑摩高校で出前授業を実施しました。

掲載日:2024年12月21日

2022年10月20日(木) 出前授業を実施しました。


講師 :JICA東京センター長野デスク 木島 史暁さん


受講者:松本筑摩高校2~4年生 20名


ODA(政府開発援助)の日本唯一の実施機関として国際協力活動をしているJICAで、海外協力隊員としてアフリカでの活動経験がある木島史暁さんが本日の講師。26歳という若さの木島さんは冒頭で、とてもフランクに生徒に尋ねました。「196」って何の数字だと思う?生徒の一人が答えました。「国の数?」…正解!!196は、国連が認めた世界の国の数です。では「143」は何の数字かなあ?それは、先進国ではない、開発途上国の数。143/196、世界人口の8割にものぼる、約55億人が発展途上国で暮らしているんですー。木島さんはそこからSDGsの話を始めました。


■世界の現状とSDGs


木島さんは最初に、SNSでバズったという1枚の写真を見せてくれました。撮影された場所はフィリピンの首都。小さな子供がマクドナルドの店舗から漏れる明かりのところに机を持ってきて勉強をしているという写真です。「現在、学校に通っていない子どもは世界で3億300万人いる」という問題を象徴する写真でした。


次のスライドで写されたのは、世界で亡くなる人の死亡理由の21.5%が「感染症」という事実。以前、日本でも流行ったデング熱は蚊を媒介にして広がった感染症。そしてみんなも知っている通り、新型コロナウイルスは今まさに世界中で猛威を振るっています。


そして、スクリーンには食糧配給所の近くでうずくまる、ガリガリの子どもの写真。これは地理の資料集にも出ていたものらしいのですが、「世界では4秒に1人が「飢餓」で命を落としている」ことを象徴する写真です。


そして地球温暖化。木島さんは生徒に尋ねました。「これらの問題は、長野県だけが頑張れば解決できると思う?」すると皆、首をかしげました。「そうなんです!」木島さんは語気を強めて続けます。「1つの国が頑張って解決できる問題って、めちゃくちゃ少ない。でも、みんなで取り組むには、同じ目標が必要だよね。それが、世界の目標SDGsなんです!」SDGsは、今の世代だけでなく、次の世代もよりよく生きるための開発を行うための目標。「『開発』っていうのは『頑張る』っていう意味。『よりよく生きていくために頑張る!』ってこと」17の目標があるSDGsについて、生徒目線でとてもわかりやすく解説してくれました。


■身近な取り組みSDGs


さらにSDGsにぐっと近づいて、木島さんは続けます。「SDGsって遠い話じゃなく、実は今まで日本国内でも取り上げられていた問題。たとえば長野県庁。僕がふだん働いている長野県庁の階段には、1段ずつに『階段を登る人を励ますメッセージ』が張ってあります。これは、みんなの運動不足を解消するため、なるべく階段を使って健康になってもらおうという取り組み。SDGsで言えば『3:全ての人に健康と福祉を』かな。また、使用済みのインクカートリッジ回収箱が設置されているんだけど、『12:つくる責任つかう責任』に当たると思います」


SDGsは意外と身近で、今から3分間で教室内にあるSDGsを探してみよう!といっても、いくつも見つかると木島さんは言います。ペットボトルの代わりにマイボトルを持っている人は「12:つくる責任使う責任」、みんながつけているマスクは「3:すべての人に健康と福祉を」など。


そして木島さんは、もうひとつポイントとなるワードを紹介してくれました。


「Think Globally,Act Locally」…世界のことを広く考えながら、身の回りの小さいことから行動する、これがSDGsのコツだそうです。例えば、「地球の未来を考えながら、ペットボトルを分別する」…そういうことです。


■JICA 海外協力隊とは


次に木島さんは、JICAの活動について紹介しました。


国家予算を使って派遣される隊員の応募資格は20~69歳。期間は原則2年、途上国で自分の得意分野を生かして、さまざまな仕事でボランティアとして働けます。例えば、ケニアではコンピュータ技術(PC教室の先生)、ボリビアでは環境教育、エチオピアではコミュニティ開発、中国では野球、ブータンでは看護師など、職種は200種類にもおよびます。


ここで、木島さんの自己紹介。


ゲームやアニメの影響で「冒険」に強い憧れがあったそうです。小さい頃はママチャリで、住んでいた山ノ内から中野までが大冒険。高校時代はロードバイクを手に入れて、もう少し遠い隣町まで。大学は県外へ行き、JICAでは日本を飛び出してアフリカへ。すべての原点が「冒険」だったということです。


■木島さんが赴任した「ウガンダ」のお話


ウガンダは、東アフリカの赤道直下の国。ヴィクトリア湖畔、ナイル川源流の国です。一生使えない知識だけど…と前置きしたうえで、「マユゲ県」「ジンジャ県」「マサカ県」という冗談のような地名もあると、地図上で紹介してくれました。


アフリカは全域乾燥しているというイメージは間違いで、サバンナが広がっている地域もあります。首都カンパラはとても発展しています。


木島さんが生活していたウガンダの家は、日常的に電力不足で電化製品が使えない状態で、スマホを充電したら電灯が点滅してしまうそうです。そんな中でもネットはつながっていて、1日1GB程度、YOUTBEチェックはできたそうです。


さらに家の中に水道はなく、近くの井戸まで水をもらいに行っていたとか、ガスはガスボンベを近くのガソリンスタンドまで買いに行ったとか、私たちの暮らしとは全く違うウガンダでの生活の様子を伝えてくれました。


極めつけに木島さんは、面白い動画を見せてくれました。向こうの草刈りはチョー大変!日本で見る草刈り機は使わず、男性がナタのような刃物を左右に振り回し、ひたすら草を刈り払いながら前進しています。そんな不思議な動画を、生徒さんは笑いの混じった驚きの表情で見ていました。


■ウガンダのSDGsの現状


ウガンダのSDGs達成度合いを色分けして図にしてみると、8割が真っ赤!課題が山盛りです。たとえば、トイレについて。ウガンダでトイレといえば、穴を掘るだけのものだそう。これではすぐに虫が湧いて、感染症などを引き起こす原因になります。


たまごを売っていた少年は「学費が払えないから、たまごを売って家計をサポートしてるんだ」と言ったそうです。各国からの援助で学費の無料化は進んでいるものの、まだまだ鉛筆やノートが買えない子どもは多いとか。また、学校の授業時間に屋外にいた小学2年の女の子に「学校行かないの?」と聞くと、「女は嫁に行くんだから勉強など不要。1年だけ行ったらあとは弟の面倒見ろ」と父親から厳しく言われているそうです。


 


さらに現地で木島さんは、マラリアにかかったんだそうです。赤血球が破壊される病気なので、おしっこが真っ黒に!4日間続いたら死ぬ、と聞かされていたのでハイになって「明日死ぬんだ!」と考えたら「まだやりたいことやれてない!」と、それまでの人生を後悔したそうです。「マジでヤバかった」その時の恐怖を、貴重な体験談として語ってくれました。


■世界の食糧問題と日本の「相互依存」


日本は食糧を5800万トン輸入しているのに、そのうち2000万トンを廃棄しているといいます。一方で世界では、貧しい人に400万トン配っているという事実。


日本の食糧自給率は、たったの37%。半分以上を輸入に頼っています。電気においては、自給率12%(ロシアは195%!)スマホなど私たちの大事なものは、自国生産のエネルギーではほとんど使えないのです!


■カードゲーム「モノはどこからきているの?」


残りの時間は、JICAオリジナルのカードゲームを使って、日本に輸入されるものがどんな国々から来ているのかを学びました。


1)グループに分かれ、モノ(製品)カードと材料(素材)カードを机に広げる。


2)順番でモノカードを1枚選んでめくり、次にそれに使う(と思う)素材カードを選んで1枚めくる(裏には国旗が描いてある)。


3)神経衰弱のように、裏に描いてある国旗が同じであれば、2枚とも自分のものに。


4)揃った国旗の国の位置を、世界地図から見つけてシールを貼る


後半は時間が迫ってあまりじっくりできませんでしたが、比較的進んだ先生たちのチームは、出来上がった世界地図を見て「意外と世界中に散らばっているね!」という感想をおっしゃっていました。


ゲームを通じて、私たちが毎日使っているモノ、普段食べているモノが、いろいろな国から輸入されていること、また、普段は気づかなくても、私たち日本人の生活が世界と深くつながっていることがわかりました。


 


生徒たちと歳も近く、終始親しみを込めて等身大の言葉で語ってくれた木島さん。世界のこと、SDGsのこと、JICAのこと、生徒たちは少しでも理解を深め、自分事として何か行動するきっかけをつかめたらいいなと思います。


<参加された生徒さん達の感想をご紹介します>


・196ヶ国の内143ヶ国が発展途上国ということがとてもびっくりしました。今も感染症が流行しているけど、世界で亡くなる人の約2割が感染症で亡くなるということを聞いてとても怖いなと思ったし、感染症対策をしたいなと思いました。


・世界の問題が知れてためになりました。日本は先進国だけど、SDGsはそこまで完璧じゃなかったのは驚きました。


・SDGsはよく耳にしていたけど、実際どんなことをやっているのか分からなかったので、少しわかりました。日本で生活していて、そこまで食べ物に困っていなかったけど、衣食住だけでも大変な国があることが分かりました。お話を聞いて、自分は学校に行っていることが他の国では行けない人が多くいることも分かりました。


・初めてのことばかり聞いて、とても興味深くて面白かったです。それと同時に、4秒に1人が飢餓で命を落としたり、学校に通えない子どもがたくさんいたり、日本の食べ物の廃棄があったりなどの話を聞いて、悲しくなりました。自分も小さなことから、自分にできることをやろうと思いました。


・SDGsについてすごく分かりやすく学べたのでよかったです。自分の周りのSDGsを探してみたいとい思います。


・SDGsについてよく知り、今後気をつけたほうが良いことを深く考える機会でした。なかなか誰でも体験できることではなかったので、よい経験でした。