実施報告
掲載日:2024年11月21日
2022年9月20日(火) 出前授業を実施しました。
講師 :長野工業高等専門学校 古川万寿夫 先生
演目 :「びっくり!超低温実験ショー」
受講者:池田工業高校定時制1~4年 20名
今回は長野工業高等専門学校の先生が、普段は子どもたちに向けて開催される特別授業を「楽しみながら理科を好きになって欲しい」ということで、池田工業高校定時制の生徒さんに向けて実施しました。
同校の化学室で授業が始まりました。今日は実験を通して「気体」と「液体」について学びます。壇上の机の上でまず目を引いたのは、大きくて不思議な形の金属製の入れ物。その細長い口から、これまた大きなガラスの容器へ、先生がおもむろに液体を注ぎ入れます。「これは液体窒素。沸点はマイナス196度です。火にかけてないのに、ぐつぐつ煮えているようでしょう。みなさんの大好きなアイスクリームの温度はマイナス20度くらいですから、けた違いの冷たさ。中に手を入れると凍傷になるほどです」
先生はそう言いながら液体を注いだガラス容器の中に、自分の手を入れました。「ジューッッ!!」まさに沸騰しているような音とともに、ブクブクとすごい泡が先生の手を包み込みました。凍傷になると聞いていた生徒たちは一瞬息を飲みましたが、泡が手を守ってくれたので先生の手は無事。みんなホッとしていた様子でした。
「ではこの中に、『花』を入れてみましょう」
ブクブクブク・・・泡に包まれたあと、取り出してみると・・・「あれ、そんなに変化がない?」これはなぜでしょうか。
「氷は、水が冷えて固まったもの。水がなければ凍らないのです。この花は実は『造花』だったので、水分が含まれていないために凍らなかったんです。」
それでは、生の花ではどうでしょうか?白いお花の束をガラス容器に入れると、同様に泡がブクブクブク・・・沸騰しています。取り出して先生が触ってみると・・・バリバリバリ!ばらばらに砕けてしまいました!!生の花には水分がたっぷり含まれているため、マイナス196度の液体窒素の中で一瞬にして凍ってしまったのです。
「やってみたい人!」との先生の呼びかけに、手を挙げた生徒が壇上で実際に生花をガラス容器に入れてみました。ブクブクブク・・・すごい!取り出した生花は、生徒が手で握ると乾いた音とともに粉々になってしまいました。「おおお!」教室から歓声が上がりました。
次に先生が取り出したのは、バナナ。水分を多く含み、太さもあるので「エネルギーを持っている」物質だと先生は説明してくれました。ガラス容器に入れてみます。「ジュワ―――!!」先ほどの花よりも激しく反応しています。しばらくして先生は、トングを使ってバナナを取り出しました。なんだか固そう。割ってみます。周りのところは白く凍っています。叩くとカチカチ音がします。
「バナナで釘を打ってみましょう」と先生。釘を木材に打ち付けるのに、かなづちのようにバナナを使います。コツ!コツ!コツ!到底バナナとは思えない音とともに、釘は木材に打ち付けられていきました!でもバナナに穴は開いていません。液体窒素で凍らされ、それほどまでに固くなってしまったのです。
今度は、カラフルな細長い風船を取り出した先生。イベントでプードルやはちまきなどさまざまな形をつくるバルーンアートでおなじみです。これを窒素の中に入れるとどうなるでしょう??
なんと、窒素に浸かっていない先のほうから、見る見る細くなっていきます。しまいには、ふくらます前のようにぺちゃんこになってしまいました。さて、それを取り出してみます。10回に1回は割れるそうです。「割れたらごめんね。」茶目っ気たっぷりに先生は最前列の生徒に語りかけます。ドキドキしながら手元を見つめる生徒たち。
しかし・・・もとの形に戻りました!!
風船の中にある空気はどこにも逃げていません。「気体」だった空気が冷やされて「液体」になり、体積が小さくなったのです。何度やっても風船はその都度、細くなったり太くなったりしました。次に、透明なビニール袋に空気を入れ、同様に試してみます。風船と同じ様にぺちゃんこになりました。よく見ると、中に少し液体が溜まっています。これは「液体空気」。空気の中に含まれる二酸化炭素が冷えて水になったのだそうです。
今度は手のひらに収まるサイズのプラスチックの物体が登場。これは、カメラにフィルムが必要だったころ、そのフィルムを入れておく容器だったと先生は説明しました。そのフィルムケースに、液体窒素を入れます。ふたをしてしばらくすると・・・「ポン!!」大きな音とともにふたが勢いよく飛んでいきました。液体が気体になると体積が800倍になるので、気化してケースの中に収まりきれなくなった窒素がふたを押し出したのです。
物質は、気体、液体、固体という「三態」に変化する際に体積が変わる、ということを改めて目の当たりにしました。
約100年前、エジソンと言われていますがイギリスのスワンさんという人が発明した「電球」。中に入っている「フィラメント」が電流により発熱して光るしくみです。空気があると燃えてしまうため、ガラスの球で包んで空気を全部外に出しています。電球の中はとても熱くなります。
シャーペンの芯はフィラメントと同じ「炭素」でできているので、これに電気を流してみる実験です。専用の装置にシャーペンの芯を装着して電気を流します。ほんの少し明かりが見えましたが、空気中では燃えて灰になってしまうので、すぐに消えてしまいました。では、液体窒素の中ではどうでしょう?装置ごと液体窒素の中に入れると・・・「わああ!明るい!!」歓声が上がりました。ここでは「冷えるから」ではなくて「酸素がないから」燃えきらずに光だけ見えるんですね。
白熱電球は製造が中止され、今や熱ではなく半導体で光る「LED」電球が主流となっています。
では、みんなで実験!
発泡スチロールの箱の中に、液体窒素を入れます。3班に分かれて実際に体験してみましょう。生徒さんに先ほどと同じ細長い風船を1本ずつ渡し、箱の中の液体窒素に浸けてみます。「息を吹きかけると飛び散って目に入ったら危ない」「たまった液体には触らない」いくつかの注意点を聞いたうえで、1人ずつ実験です。
液体窒素に浸けるだけで太くなったり細くなったりする風船。「ちょーキモイ!」自分で実際にやってみると、その不思議さにテンションが上がる生徒さんが大勢いました。
生徒さんから、以下のような感想をもらいました。
・初めて見て、触って、楽しかった
・生で見れたのは貴重な経験だった
・見るのもいいけど、自分でやるのはやっぱり楽しい
・こんな授業は毎日受けたい
「自分でいろんなことを試してみるのが面白いんです。料理でもなんでも、自分でやってみると楽しくなるので、これからもぜひさまざまなことにチャレンジしてみてください。」
人生のエールにも聞こえるメッセージで、先生は楽しい実験を締めくくりました。