NAGANO SDGs PROJECT主催
実施報告
団体名: JICA東京 長野デスク
掲載日:2024年12月21日
2023年5月9日(火)
「国際協力とSDGs-JICA海外協力隊ウガンダでの経験を通じて-」
講師 :JICA東京センター 長野デスク 木島史暁さん
場所 :長野市立北部中学校
受講者:長野市立北部中学校2年生 約180人
今回の講師、木島史暁さんが所属するJICAは、日本で唯一の政府開発援助の実施機関として世界約96カ所に拠点を持ち、開発途上国への国際協力を行っています。木島さんご自身も海外協力隊員としての活動経験があり、今回はその体験談とともに「国際協力とSDGs」についてお話していただきます。
「196」は何の数字?
体育館に集まったのは長野市立北部中学校の2年生約180人。冒頭、木島さんは生徒たちにこの質問を投げかけました。生徒たちは積極的に手を挙げて、1人の生徒が「発展途上国の数?」と答えてくれましたが、惜しくも不正解。もう1人の生徒が「世界の国の数」と答えると、「正解!196は世界の国の数でした。でも、発展途上国という言葉が聞けてとても嬉しいです!」と木島さん。実はこの質問には「143は何の数字?」という質問が続き、それが開発・発展途上国の数でした。「世界には約55億もの人々が発展途上国で暮らしていて、世界人口の8割を占めています。世界的に見れば、先進国に住む僕たちの方がマイノリティなんです」と木島さんは説明しました。
世界の現状を見てみよう
まず、スライドに映し出されたのは数年前にSNSでバズったという1枚の写真。写っているのは暗い路上に机を置き、マクドナルドの店舗から漏れた明かりで勉強をする男の子です。「今、世界には学校に通えない子どもが3億300万もいる」という問題を象徴する写真を見て、生徒たちは教育制度が整備された日本との差に驚いた様子でした。
続いて、木島さんが話してくれたのは世界で亡くなる人の21.5%が感染症で亡くなっているという事実。ここ数年、新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るい、私たちもその感染力や危険性を実感しましたが、その前からさまざまな感染症が世界中の人々を苦しめていました。
そして、世界の問題としてもう1つあげられるのが砂漠化。木島さんは「毎年東京ドーム128万個分の面積が砂漠化しています」とその深刻さを伝え、続けて「今あげた3つの問題は、1つの国が頑張れば解決するかな?」と質問しました。生徒たちは首を横に振りました。「そうです!長野県だけが、1つの国だけが、頑張ってもどうにもならない。だから世界一丸となって頑張る目標として誕生したのがSDGsなんです。『誰一人取り残さない』それが、みんなで頑張るということです」と説明した上で、大切なキーワードをもう1つ教えてくれました。それは、「Think Globally,Act Locally」=「世界のことを考えながら、身の回りの小さなことから行動する」一人ひとり、まずはできることから行動すれば、それがSDGs達成への第一歩です。
JICA海外協力隊として赴任したウガンダでのお話
後半、木島さんは海外協力隊として2年間赴任していたウガンダの現状について、体験談を交えてお話してくれました。
木島さんがウガンダに赴任して驚いたことは、ビクトリア湖やナイル川の源流があり、想像していたよりも水資源が豊富で緑豊かな国だったこと。さらに、首都のカンパラはとても発展していて、高層ビルが立ち並び日本製の車がたくさん走っていたそうです。
一方で木島さんが住んでいた家は、スマホを1台充電するだけで電灯が点滅してしまうほどの電力不足。家の中は水道やガスが通っておらず、井戸まで水を汲みにいったり、ガスボンベを購入していたのだとか…。「サバイバルをしているみたいだった」と当時の生活を振り返りつつも、「でも、楽しいことが数えきれないほどありました!」と語ってくれました。
続いて、スクリーンにウガンダのSDGs達成度を表す図が映りました。色分けされた図は未達成を示す赤色だらけで、まだまだ課題が山積みです。例えば、ウガンダでは穴を掘っただけの不衛生なトイレが主流なこと、「女は社会に出ないから、勉強する必要がない」という考えや環境のせいで、学校をやめなければならない女の子もいることー。生徒たちは、話を聞きながら、日本のあたりまえがウガンダではあたりまえではないことを感じている様子でした。
さらに木島さんは、「発熱が4日続くと死ぬ」と聞かされていたマラリヤに感染し、発熱3日目の夜は「明日死ぬんだ!まだやりたいことがあるのに!」と人生を悔いたそうです。「この体験がきっかけで、『満足できる人生を送ろう』という目標ができたことが、ウガンダでの一番の収穫でした」と話してくれました。
最後に「SDGsは2030年までに達成する目標。『ジブンゴト』として、自分の将来のためにできることを考えてほしい」と生徒たちに伝え、授業を締めくくりました。
生徒たちにとって今回の授業が世界のさまざまな問題に目を向けるきっかけとなり、小さなことでも行動を起こしてくれることを願います。