NAGANO SDGs PROJECT主催
実施報告
団体名: 独立行政法人 国際協力機構
掲載日:2021年05月27日
今回出前授業に参加してくれたのは、長野県長野東高等学校2学年の皆さん。ZOOMウェビナーを用いて、各教室で出前授業が行われました。
今回の講師は、JICA(国際協力機構)長野デスクの木島史暁さん。JICAは日本の政府開発援助(ODA)の実施機関として、JICA海外協力隊の派遣など開発途上国への国際協力を専門的に行っています。木島さんもJICA海外協力隊として、ウガンダで国際協力活動に取り組んでいたのだとか。今回の出前授業では、どんなお話が聞けるのでしょうか。
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講義は、生徒たちへのクイズからスタート!
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Q:地球全体の水をビニールプール1杯分とすると、私たちが普段使える水はどのくらいの量でしょうか?
A:バケツ1杯分
B:コップ1杯分
C:小さじ1杯分
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皆さんは分かりますか?
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正解は、Cの「小さじ1杯分」!
地球上の水は約97%が海水で、日常で使える水はたったの2%ほど。これだけ貴重な水を、私たち人間は大量に消費し、汚し続けています。しょうゆ小さじ1杯が入った水を魚が住めるほどの水質に戻すには、バスタブ約5杯分もの水が必要なのだとか。しかも、このままだと2050年には海洋プラスチックごみが海に生息する魚の総量を超えてしまうそう!
衝撃の事実に、生徒も驚きの表情を浮かべます。
このように、地球の抱える課題を解決するべく発足した「SDGs」ですが、過去にはその前身として「ミレニアム開発目標(MDGs)」という取り組みが行われていました。MDGs は2015年末を達成期限とし、開発途上国の貧困削減を目標としたもので、極度の貧困率や、5歳未満の子どもの死亡者数などを減らすことに成功しました。しかし同時に、環境破壊や感染症など地球規模の課題の解決には、開発途上国だけでなく先進国含むすべての国が取り組む必要があることが明らかになりました。また、開発の結果極端な貧富の差が生まれるなど、「取り残されてしまう人々」を生み出してしまう側面も。
「SDGs」のキーワードである「誰ひとり取り残さない」は、こういった過去から生まれたのですね。
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話題は、JICAが支援する「開発途上国」に移ります。
日本は、開発途上国を支援するために技術協力や資金協力など、様々な国際協力に取り組んでいます。
「なぜよその国の支援を行うのか」「遠い国の情勢が日本にどう関係するのか」―そう思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実は私たちの生活は開発途上国なしには成り立たないのです。。
その理由は、日本が「輸入大国」だから。
日本は食糧をはじめ、資源やさまざまな製品の原材料などを開発途上国から輸入しています。また、日本国内で労働人口が減っていく中で、途上国から多くの人々が日本で学び、働きに来ています。伸びしろが大きな途上国に進出している日本企業も少なくはありません。気候変動や感染症といった、開発途上国と共に抱える課題もあります。開発途上国の課題解決は、私たちにもかかわってくるのです。
国際協力はいわば「自立支援」。木島さんは「湖のほとりでお腹をすかせている人に、ただ自分の釣った魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えること」だと説明します。
JICA海外協力隊員はODAの一環として、さまざまな技術の指導やコミュニティ形成など、自分の得意な分野で開発途上国を支援します。スポーツのナショナルチームの育成・応援、女性の自立支援、コンピュータ技術の指導、看護師としての医療への貢献など、世界中で大活躍。木島さんはウガンダへ派遣され、現地で稲作栽培の研究と普及を行っていたのだとか。
ウガンダは東アフリカに位置し、ナイル川とヴィクトリア湖を有する緑が豊かな地で、「アフリカの真珠」とも呼ばれるほど美しい国。しかしながら、さまざまな課題を抱えていたのだそうです。
就学率が97%と言われているウガンダですが、卒業できるのはその3分の1ほどの34.5%。貧しさゆえに学費が払えず、休学や退学となってしまうケースが多いのだとか。学校に行けない子どもたちは、小さな子どもの面倒を見たり、ヴィクトリア湖の観光客に茹で卵を売ったり、親の手伝いをして毎日を過ごしているのだと木島さんは教えてくれました。
教育の質と貧困問題は密接に絡んでいます。解決できない限り、貧しさのループは延々と続いてしまうのです。
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世界では、約8割もの人が開発途上国に暮らしています。今日生きるにも困る人々が多くいる一方で、廃棄大国である日本は、食べるものの無い国から食べ物を輸入し、そして、捨て続けています。食糧問題以外にも、女性差別や感染症、教育など、世界にはまだまだ解決するべき課題は多くあります。
「SDGsは大人が解決してくれる問題ではありません。自分自身のために、そして次の世代のために、皆さんにはよく考えてほしい」と講義を締めくくった木島さん。画面の向こう側の生徒たちにも、その想いは届いたのではないでしょうか。