実施報告
掲載日:2024年09月10日
岡谷東高校の2年生115名は、来る10月に修学旅行で神戸市を訪れ、「阪神・淡路大震災記念 人と未来防災センター」を見学する予定です。その事前学習として9月10日(火) 、同校の格技室にて、「長野SDGs 地域防災プロジェクト」の方々を招き、災害時に逃げ遅れないための危機管理の必要性を学びました。
【諏訪地域での身近な災害】
最初に信州大学工学部の吉谷先生から、これまでの災害の歴史と、岡谷市周辺の災害を振り返ったお話がありました。
災害の種類は、地震、土砂災害、河川氾濫、浸水、風水害などあり、昭和30年代半ばまでは毎年1,000人を超える死者がでていたそうです。平成7(1995)年に起きた阪神・淡路大震災では死者が約6000人、平成23(2011)年の東日本大震災は死者が約20,000人で、平成以降もっとも被害の多い災害となりました。
今日のテーマ「水害」は、地震ほど被害は大きくないものの、とても身近な災害です。最近では、平成18(2006)年に岡谷で大雨がありました。梅雨前線の影響による豪雨で、土石流が発生。民家が押しつぶされる被害が出ました。土石流とは、大雨で水が地中に浸透することで山や谷の土や石、砂などがくずれ、水と混ざって大変な勢いで低地へ向かって流れる現象です。
平地では、降った雨が川に入りきらずに氾濫する災害が起こります。平成25(2013)年には岡谷市役所近くの塚間川で住宅地が浸水する被害がありました。通常、山に降った雨が川を流れてくるのが普通ですが、最近では街に大雨が降ることが多くなっているそうです。
【気象レーダーをつくる日本無線(株)の紹介】
続いて、日本無線の方から自社の紹介がありました。
日本無線株式会社は、1954年に日本で初めて気象レーダーを開発した会社。車山高原の山頂にもレーダーを設置し、気象情報を収集しています。
同社の気象レーダーは、跳ね返ってくる電波を受信することで、雨粒までの距離を3次元で捉え、どこでどれほどの雨が降っているか計測します。信州大学の屋上に設置してあるレーダーは80km先までわかるものですが、車山の大型レーダーは300km先まで観測が可能。全国各地にレーダーを設置してリアルタイムにデータを収集、分析しています。
災害時には、SNSなどの不確実な情報に惑わされず、「信頼できる情報」を選択して収集する必要があります。たとえば国土交通省のWEBサイトや「信州防災アプリ」、防災無線など。気象レーダーの情報を分析して活用しているサイトは、ハザードマップにあわせリアルタイムで状況確認が可能です。日頃から正しいデータの収集を心がけましょう、と呼びかけました。
【タイムラインをつくってみよう】
令和元年の台風19号で川が氾濫した際には、長野市で1700人が逃げ遅れなどで救出されたそうです。逃げ遅れの原因は、「バイアス」という人間特有の心理。当時、防災情報は多くの人に届いていたものの、「きっと大丈夫だろう」「みんなと同じ行動をとろう」という心理がマイナスに働いてしまい、逃げ遅れにつながってしまったといいます。東日本大震災の際に率先して避難できたのは、防災教育を受けていた(大人よりもバイアスの少ない)子どもたちだったそうです。
大雨の危険性は3~5日前からわかります。岡谷市も情報を出します。「ふだんから『こういう場合は逃げる』と準備しておくことが重要です」と先生は強調します。
そこで、重要になってくるのが「タイムライン」。ここからは、修学旅行で行動するグループに分かれ、配られたシートに沿ってみんなで調べたり話し合ったりします。まずはスマホでQRコードを読み取り、Web上のハザードマップで自分の住んでいる場所にどれほど危険があるのか調べてみました。「うちは大丈夫だ!」と安心した生徒もいましたが、同校のある諏訪湖周辺は概ね浸水危険区域。水害発生の日にちや時間によって対応が変わってくるでしょう。同時に、地域の避難場所も確認しました。
次に、避難時に「何を持って逃げるか?」グループで話し合ってみます。ここでは、父母と幼児もいる仮想の4人家族を想定。あるチームは、食物や水のほか、赤ちゃんがいるからお菓子、カップ麺、車で移動できるなら「ふとん」も!と発表しました。スマホ、ラジオ、タブレットが挙がった班には、先生から「充電器もね」と補足。抜けているものはないかふだんから考えて避難訓練に参加した方がいい、と重ねてアドバイスをもらいました。
今日は仮想家族で避難の行動を考えましたが、家に帰ってぜひ自分の家族でタイムラインをつくってください!と、先生から宿題が出されました。
次月の修学旅行では、立っていられないほどの地震を実体験するプログラムもあるそうです。今回の学びも合わせ、生徒たちがさまざまな災害への「備え」を真剣に考える、良い機会になることでしょう。