実施報告


開催概要

6月8日(土)【出前授業レポート】松本大学教育学部

掲載日:2024年07月16日

NSP出前授業ではおなじみの安曇野市立堀金中学校 両角太教頭先生による出前授業が、松本大学で開催されました。今回授業を受けるのは、教育学部の1年生53名。教師を目指す学生の皆さんに対して「SDGsネイティブの子どもたちと同じレベルで、世界のこれからについて考えていける教員になってほしい」と願う両角先生。「2×2バトル -どのSDGsか当てながらアイディアを考えよう-」と「フィールドビンゴ」を通じて、SDGsの「自分事化」を体験します。


——————


授業の前に、まずはアイスブレイク。ランダムに4人1組のチームを組み、「揃えようゲーム」に挑戦します。両角先生が「○○といえば?」と投げかけたお題に対し、チーム全員で答えが一致したら大成功!


「長野県の果樹園で作るものといえば?」「「「「りんご!」」」」


「じゃあ30年後の長野県の果樹園で採れるくだものは?」「「「「う~ん…?」」」」


ゲームを通じて教室の空気が温まったところで、出前授業がスタート!今回は2つのワークショップを行います。



 


ワークショップ❶2×2バトル -どのSDGsか当てながらアイディアを考えよう-


アイスブレイクを行ったチーム内でさらに2対2のペアに分かれます。各チームそれぞれに「架空の課題」が与えられます。その課題に対し、SDGs17の目標に関連した解決方法を考え、付箋に書き出します。(イラストでもOK!)この解決方法が「SDGsの何番の目標に関連したものなのか」を自分のペアに当ててもらい、得点を競います。


—————————————————————-


【例】課題「SDGs遊園地のクリエイターに抜擢。何をする?」


・解決方法①「入場料の一部を被災地に寄付」⇒1「貧困をなくそう」


・解決方法②「みんな一緒の遊具に乗る」⇒5「ジェンダー平等を実現しよう」


・解決方法③「いきなり雨や雷が降る環境悪変ゾーンを作る」⇒13「気候変動に具体的な対策を」



—————————————————————



さっそく課題の解決方法を考え始める学生の皆さん。しかし「17個の視点で考える」のが思いのほか難しく、頭を悩ませます。両角先生の手も借りつつ、解決方法を書き出したチームからクイズタイムに突入。「これは絶対目標7だと思う」「本当に?違うと思うけどなぁ…」「その問題は簡単すぎ!マイナス20ポイント!」


各チーム和気あいあいとクイズに答え、それぞれの解決方法にコメントし合います。最後は他のチームにどんな課題が出て、どんな解決方法を考えたのかを、全体で共有しました。



—————————————————————



「例えばこの教室にあるただの椅子も、17個の視点で見てみれば色んな発見があります」と両角先生。「材質は環境に優しいものだろうか?」「どんなルートで材料を仕入れ、製造されているのだろうか?」「どんな人にとっても使いやすいデザインだろうか?」―このようにさまざまな視点で観察することで、物事の思わぬ良い点や悪い点が見えてきます。同じように、このゲームで考えた課題解決方法や、自分たちが普段「良い事」だと信じて取り組んでいる活動も、「本当にSDGsの達成につながっているのか?」と考えてみることが大切なのだそう。例えばごみ拾いひとつとっても、「そもそも自分たちがごみ拾いをすることは、本当に何かの役に立っているのか?」「その時間でできる“もっと役に立つこと”があるかもしれない」などと考えてみることで、行動の幅をさらに広げることができるのだと語りました。


 


ワークショップ❷フィールドビンゴ



 


次は教室を飛び出して、フィールドワークを行います。学生の皆さんに配られたのは「ビンゴ用紙」。「地球フィールドビンゴ」「人間フィールドビンゴ」「豊かさフィールドビンゴ」など、さまざまなテーマで作られたビンゴを片手に、学内で指定されたものを探します。例えば「豊かさフィールドビンゴ」が配られた場合、探すのは「点字ブロック」「LED」「公園」「公害のない場所」など。中には「温泉」や「ごみのない川」など、学内では見つけるのが難しいお題も混ざっています。



40分ほど探索した後、教室に戻り、どんなものが見つかったかを共有しました。「大学からだと川が見えなくて、チェックはつけられなかったんだよね」と話す学生に、「本当にそうかな?川どころか、海だってこの教室の中にあるよ。探してごらん」と両角先生。学生たちはしばらくポカンとした後、教室をぐるりと見渡して、少し考えて…「今ここから見える雲は、海の水蒸気からできたものかもしれない」「皆が今着ている服は、海を渡って海外から輸入されたものかもしれない」「目の前にあるペットボトルが海まで流されてしまったら、海洋汚染の原因となってしまうかもしれない」と、次々に「海」に関する事柄を挙げはじめました。


 


たとえ目の前に「ない」ように見えるものでも、関連した事柄はたくさん見つけることができます。また、目の前に「ない」からこそ分かることもあります。自分たちが地雷の「ない」場所に生きている、ということを改めて認識することで、「心身の安全」を実感できます。学内の女性用トイレに生理用品が常備されて「いない」ことを周知することで、男性も「女性が抱える不便さ」について考えるきっかけができます。身の回りに「ある物事」・「ない物事」は、どちらもSDGsに関連づけて考えるきっかけにすることができるのです。


「行動変容には、“無関心⇒気づく⇒動く”というステップがある」と両角先生。しかし、特に日本人は「気づき」を「自分事」にしていく意識が低いと感じているのだそう。だからこそポイントになるのが、今回体験した2つのゲームのように「身の回りの身近な出来事に世界の課題を結び付けること」!


ただ「地球温暖化を食い止めよう」と言ったところで人を動かすのは難しいかもしれませんが、地球温暖化のせいで「ゲリラ豪雨が起こった」「感染症が起こった」「自然災害が起こった」「外での活動が危険なほど気温が上がった」その結果として「部活動が停止になった」などということになれば、地球温暖化が「自分事」として映りやすくなります。


 


次のステップは「知っているし、分かっているけど実践できない」という段階の人へのアプローチ。これについては「意識化」と「スキルトレーニング」を行うことで「知っているし、分かっているからやる」に変えていくことができるのだそう。「意識化」とは「課題を日常に持ち帰る」ことで、「スキルトレーニング」とは「課題解決の方法を身につける」こと。


例えば子どもたちに「世界のためにできることは何?」と問いかけると、大抵は「募金」と返ってくるそうですが、これは募金以外の方法を知らないから。大人が「世界の問題」を日常に持ち帰り、募金以外の解決方法を示してあげることで、取り組みのスキルを徐々に磨くことができます。例えば「スポーツのルールを守る」ことだって、公平な世の中づくりにつながる「世界のためにできること」の一つなのです。


 


両角先生は、「これらの取り組みは“1人が100歩分頑張る”よりも、“100人が1歩ずつ頑張る”方が大きく進む」と力を込めて語ります。「大きなダム1つに頼ってしまうと、災害でダウンした時に潰れてしまうけど、小さなダムがたくさんあれば、どこかで何かあってもカバーし合える。人数が多ければ世論や価値観を形成することもできる。だから、これから未来を担う君たちに、ぜひ自分事として取り組んでいただきたいと思います!」―そう授業を締めくくりました。


 


今回の出前授業は、「未来の先生」である学生の皆さんにとって「SDGsめがね」をかけて世界を見る練習になったのではないでしょうか。「子どもたちに何を伝えようか」「自分たちは何をしようか」と考える機会になっていたら嬉しく思います。


 


▼【2×2バトル -どのSDGsか当てながらアイディアを考えよう-】は


こちらからダウンロードいただけます


https://www.naganosdgs.jp/materials_list/suwa2