NAGANO SDGs PROJECT主催

実施報告

女らしさ、男らしさって?参加型ワークショップでジェンダーについて考えよう!

団体名: 公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン

開催概要

2024年7月25日(木)松本深志高校で出前授業を実施しました。

掲載日:2024年07月25日

テーマ:「女らしさ、男らしさって?参加型ワークショップでジェンダーについて考えよう!」


講 師:公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン 澤柳 孝浩氏


松本市役所住民自治局 人権共生課 山本 修平氏


受講者:松本深志高校 1年生17名


 


【はじめに】


松本深志高校1年生の「探究人ワークショップ」の時間に、プラン・インターナショナルの澤柳孝浩さん(飯田市出身)がジェンダーについてみんなで考える授業を開催しました。プラン・インターナショナルは、スペイン内戦下の孤児を支援する活動から始まり、今や世界80カ国以上で活動するNGO。活動をとおして、男の子より女の子の方がより厳しい状況にあるということがわかってきたことを踏まえ、現在は世界中の「ジェンダー平等」を目指して活動している団体です。澤柳さんははじめに、今回みんなが安心して自分の意見を話せるよう、大前提として授業の約束事を共有しました。


*参加は強制でない*言いたくないことは言わなくていい*話を聴こう&否定しない*今日の話はこの場限りで


・・・それではワークショップ開始です!


 


【第1部「男女のイメージ」】


全員が立ち上がり、教室を大きく4つに分け、澤柳さんの投げかける質問に対して、自分が思う答えの場所に移動します。ウオーミングアップとして「好きなおやつは?」の質問に、ポテトチップ、チョコ、アイス、その他の4つに分かれてみます。移動後、それぞれ集まった人に、何が好きですか?と聞くと、アイスエリアでは「いちごのかき氷」という人や「バニラ!」と答える人、その他エリアでは、「クッキー」や「杏仁豆腐」といった意見も。それぞれ発表してくれた人には拍手を送り、全ての意見を肯定します。それでは本番の質問開始。以降は「そう思う」「どちらかというとそう思う」「そう思わない」「どちらかというとそう思わない」の4つに分かれます。


 


Q1:女の子は、メイクした方が可愛いと思う?


移動してみると、「そう思わない」エリアの人は0人でした。「メイクしたらかわいい子もいるし、しなくても笑顔がかわいい子もいる」という「どちらかというとそう思う」意見が多かったです。中には「前まで興味なかったけど、メイクを覚えたら性格が明るくなった」と自分の体験談を語ってくれた人もいました。


 


Q2:男の子は人前で泣かない方がいい?


次の質問で「そう思う」「どちらかというとそう思う」と答えたのは全員男子!「男でも女でも、できるだけ笑っていた方がいい」「自分は空手をやっていて、泣き虫だった。泣いているより笑っている方がいい」と実体験に基づいた意見も。一方、女子は全員「そう思わない」という意見だったのが印象的でした。


 


Q3:女性は男性より家事育児に向いている?


ここでは全員が「どちらかというとそう思わない」と回答!「人それぞれ得意不得意がある」「性別は関係ない」という意見が多数でした。


 


Q4:男性のメイクに違和感がある?


「そう思う」人は0人で、ほとんどの人が「そう思わない」「どちらかというとそう思わない」でした。男性メイクへの違和感は年々減少しているそうで、澤柳さんも「そろそろ自分もメイクしないといけないかな」とつぶやいていました。


 


Q「男の子って、女の子って、どんなイメージがある?」


今度は席に戻り、ふせん1枚につき1個思いつく答えを書いてグループで発表し、黒板に貼ってみます。


「女の子」のイメージはというと、赤色、可愛い、パステル、リボン、スカート、色白、長髪、スタイルが良い、など見た目のイメージから、字がきれい、メイクが好き、きれい好き、食べること好き、トーク好き、恋バナ好き、共感上手、など趣向や行動の特徴までさまざまに広がりました。


「男の子」のイメージは、短髪、背が高い、声が低い、力が強い、筋肉、運動神経がいい、など身体的特徴のほか、やんちゃ、わんぱく、ラーメン、たくさん食べる、ゲーム好き、だいたいがオタクなどというユニークな考察も。


 


Q「誰によって、何によって」そんなイメージを持つようになった?という質問には、アニメ、テレビ、雑誌、戦隊もの、学校、部活、道徳、集団生活・・・という外的環境要因の一方で、家族、友人のほか、自分と重ねて考えるなど、自分が実際に周囲で見た・感じた経験から醸成されたという意見も多く挙げられました。


 


【第2部 ちがいのちがい】


休憩をはさみ、第2部で各自に配られたワークシートには5つの事例が記載されています。それぞれに「この違い、あってもいい?」「いけない?」を考え、その理由をグループ内で発表し合います。


Q1:行事の準備で、男子は力仕事をしなさいと言われ、女子は重いものは持たなくてもいいと言われます


この問いには「あってもいい」という意見が多数見受けられました。「力がある人がやればいい」というほか、「女子は筋力が少なく足手まといだから」というネガティブな声も。一方、「性別に関係なくできる人がやればいい」「持てるものは女子も手伝うべき」などの意見も多くありました。


 


Q2:両親は共働きなのに、家事は母親だけがやります


これは「いけない」が多数。「一緒に生活していくって決めたのだから同じくらい負担してもいいと思う」「家庭の中で役割を決めて分担するならいいけれど」「各家庭でよい割合を見つけたらいい」「うちは父親もやります」と家庭事情を教えてくれる生徒も。「自分はまだ働く経験をしていないけれど、体力、精神力ともにつらいと思う。全部ひとりでは無理!」将来をイメージして、自分ごとで考えてくれる女子もいました。


 


Q3:日本の中学校の校長は、89%が男性、11%が女性です


この問いには頭を悩ませる人が多数。「校長をやりたい女性がどれだけいたかじゃない?」「功績や能力がある人がやるべきでは」「管理職に選ばれるのは性別でなく能力であってほしい」さまざまな意見が飛び交いました。


 


Q4:日本の給与所得者の平均給与は、男性が563万円、女性は314万円です


これは多くの人が「いけない!」という意見。「正社員とバイトの差とかもあると思うけど、200万円以上の差はおかしい」「対等評価で同じ労働が与えられるべき」「生活に大事なお金の差は生活水準の差」「育児分業が必要」「収入の差減らしたい」と多くの意見が出ました。


 


Q5:電車に女性専用車両はあるが、男性専用車両はないです


これも「いけない!」人が多数。「双方が安心して乗るためにあったほうがいい」「男性だって女性と一緒に乗りたくない人もいると思う」「どちらかを特別に扱うのでなく両方大切にしたい」「男性用も作って平等にすればいい」。なるほど、と思える意見がたくさん出ました。


 


「日本って、ジェンダー平等な国だと思う?」


次に、自分の考えるジェンダー平等指数を、挙げる手の高さで表してみよう、と澤柳さん。とても平等だと思う人はまっすぐ上に、全然平等じゃないと思う人はまっすぐ下に。せーの!で挙げてみたら、ほとんどの生徒の手が水平で「まあまあ平等」という意見でした。しかし澤柳さんは、みんなの考えを覆すデータをグラフで示しました。


1日の有償労働時間(外で仕事をする時間)は、男性は女性の1.7倍。一方、無償労働時間(家事・育児などの時間)は女性が男性の5.5倍です。給与所得者の年間平均給与も男性は女性の約2倍!フルタイム労働者に限っても、女性は男性の77.5%という格差があります。日本では、同じ職位でも給与に差があったりして、OECDの中でも低いそうです。


「ジェンダーギャップ指数」において、日本はなんと118位!最近になって女性の大臣を増やしたので少し改善したものの、経済分野では0.568、政治の分野では0.118と非常に低水準なのだそうです。


「ジェンダー不平等」とは、「こうあるべき」という思い込みから役割や扱いが異なり、不利益を受けたり、平等な機会が与えられないことです。SDGsでは2030年までにこの「ジェンダー平等」に取り組むことを約束しています、と説明してくれました。


 


【第3部 みんなで考えよう!「ジェンダー平等」な松本市】


ここで、澤柳さんは「熱い気持ちを持つ松本市の職員」として、市役所の住民自治局人権共生課でセクシャルマイノリティを担当している山本修平さんを紹介しました。山本さんからは松本市の取り組みと、現状松本市が抱えるお悩みをお話しいただきました。


これまで「女性センター」だったものを「ジェンダー平等センター」に改名したり、女性管理職を増やすため、現在女性の課長率5%を30%に上げる目標を立てたりしました。しかし未だ町内会、自治会、PTAの会長は男性が当たり前だったり、課題は山積みです。さらに人口流出を食い止める方法、現在1.3人という出生率を高める方法など、答えは簡単に出ませんが、認識することから行動の変容につながるので、どうしていったらいいかアイデアを考え続けてほしいーと生徒たちに訴えました。


 


最後に、「松本市をジェンダー平等な街にするには?」というお題で、3つの項目について生徒たちに考えてもらい、アイデアをふせんに書いて貼り出しました。


■高校生として力を入れてほしいこと?


ジェンダーについての意識・関心を高める、身近なものにする、図書館にLGBT図書を増やす、など。


 


■どうやって高校生を巻き込めばいい?


イベント、講演会、ワークショップなどを増やし、身近な人に教えてもらう機会を作る、中学生や他校の生徒、地元の大学生と話し合ってみる、当事者に実際に話を聞いてみる、など。


 


■「パレア松本(もとMウイング)」を高校生に身近なものにするには?


興味をひくPR、イベントを企画する、駐輪場のオープン時間をもう少し早くする、学食的なもの、フードコートをつくる、学習室を設置する、自習室利用の特典をつける、など。


 


「自分たちでワークショップをやってみるとか、探求の授業でパレアに行って学びを深めるとか、一歩進めて、ぜひ自分ごとにしてほしいです!」と澤柳さんも生徒さんに熱い視線でメッセージを送り、今日の授業を締めくくりました。


どんな課題にも真剣に向き合って考えることで、見えてくるものがあったり、何か行動につながったりするものです。今日のワークショップが、参加された生徒さんの何かしらの行動変容につながることを期待します。