信州大学教育学部附属長野中学校では、「あさひのプロジェクト」という学校独自のプロジェクトに、3学年全生徒205名で取り組んでいます。
今回NSP事務局は、「生活協同組合コープながの」さんと共同で、企業から提示された社会が抱える「課題」に対し、生徒が創意工夫を凝らしながら解決へと導く「企業ミッション」に参加。「フードロス削減」に関する課題解決に取り組む生徒2名をサポートしていくことになりました。
半年間フードロスについて学んできた2人。この活動の集大成として、NSPの事務局員である、広告会社「ながのアド・ビューロ」の北原さんが、「情報を効果的に伝える」ための方法をレクチャーしました。今回は2人からテーマを引き継いで、次年度以降も取り組みを実行していく2年生5人と一緒に、計7人で全2回のセミナーに参加します。
第1回目のセミナーでは、座学とワークショップで「広告」について学びました。広告会社は、テレビやインターネット、新聞などさまざまな媒体に広告を出すことで、「このサービスを広めたい」「この商品を売りたい」といった悩みを抱える企業の課題を解決する企業です。
広告はその種類によって異なる性質を持ちます。例えば新聞広告やテレビCM、ラジオCMは不特定多数の人に向けて作られることの多い広告です。一方でチラシやダイレクトメール、パンフレット、ポスターは、「商品やサービスに興味がありそうな人」がターゲットになります。看板やデジタルサイネージ、ラッピングバス、イベントも広告のひとつです。これらの多様な広告媒体を組み合わせることで、より効果的に伝えたい情報を発信することができます。
ここで北原さんから課題が出されました。
——————————————————————-
【課題1】北原農園のりんごジュースを宣伝してみよう!
——————————————————————-
北原さんのご実家である北原農園のりんごを使った100%果汁のりんごジュース。
贈答用としては使えない、傷がついたりんごで作っています。
濃厚で栄養満点!隠れファンは多いのですが、りんごを買ってくれた方にサービスとしてあげているものなので、認知度は高くありません。
価格は1本600円なので、ジュースにしては少しお高めです。
2つのグループに分かれて考えました。
・長野県外の人から見たら「長野のりんご」には大きな魅力があるはず。
→観光客がたくさん来る「道の駅」に置くことで、広告効果も期待できるのでは?
・地元で採れたりんごなので安心感がある。
→家族に安心・安全なものを食べて、健康でいてほしい人がターゲットになるのでは?
・もともとりんごを買ってくれた人に配っていた。
→りんごジュースの案内DMを送れば、リピーターになってもらえるのでは?
・パッケージにかわいいりんごのキャラクターが載っていて目を引く。
→ポスターやCMのメインビジュアルとして使えるのでは?
・少し高級なジュースを飲みたいタイミングっていつだろう…。
→家族や親戚が集まる「年末年始」に合わせてCMを打てば、パーティーの飲み物として候補に入れてもらえるのでは?
・子どもが「これ飲みたい」と親におねだりすれば、買ってくれる可能性が上がるはず。
→子どもがテレビを見る土日の18時頃にダンスや歌がキャッチ―なCMを流せば、子どものファンを増やすことができるのでは?
…と、短い時間の中で、たくさんのアイデアが出ました。
次に学ぶのは「WEB広告」について。インターネットを通してたくさんの人に見てもらうことができる広告です。検索エンジンやWEBページ、SNSなど、あらゆるところに出没します。年齢や性別、地域、興味関心などターゲットを細かく設定できるので、届けたい人にピンポイントで情報を届けることができるのが大きな特徴です。
このWEB広告も「誰」に「何」を伝えるかで広告を出す場所が変わります。
また多くの場合、WEB広告をクリックすると、その広告内容についてのLP(ランディングページ)にアクセスすることができます。
LPは「これだけは見て!」という情報だけがぎっしり詰まった、「説得のための資料」のようなもの。分かりやすく、魅力的に作ることで、問い合わせや注文につなげることができます。
ここで北原さんから次の課題が出されました。
——————————————————————-
【課題2】SDGsのことを在校生にPRしよう!
——————————————————————-
今まで学んできたSDGsについての内容をぎゅっとまとめ、生徒の心を動かすPRを考えました。
課題1と同じグループで考えていきます。
・学校で過ごす中で一番「食」に触れるのは給食の時間。
→全学年に向けて、野菜の切れ端などで作った「SDGs献立」を提供したり、給食委員に各居室を回ってもらって、残渣の現状を訴えてもらうのはどうか?
・附属長野中には総合的な学習の時間を集中的に行う「ヒューマンウィーク」がある。
→来年度入学する小学6年生の皆さんや、学校に入ったばかりの新入生に向けて、ヒューマンウィークの先駆けとして「SDGsな考え方」を刷り込んでおくのはどうか?
…といった意見が出ました。
最後に次回までの宿題として、3つ目の課題が出されました。
——————————————————————-
【課題3】SDGs壁新聞を作ってみよう!
——————————————————————-
この日に学んだ内容を生かしながら、チームで協力してターゲットに向けて、A3用紙3枚分の壁新聞を制作してください。【興味をそそるタイトル】→【伝えたいことの概要】→【伝えたいことの詳細(1)】→【伝えたいことの詳細(2)】→【最後に伝えたいこと】の順で情報をまとめ、読む人に訴えかける作品に仕上げましょう。
次回のセミナーは3週間後。どんな作品ができあがるでしょうか?
・・・
第2回目のセミナーは、半年間伴走していただいたコープながのさんにもご参加いただきました。まずは壁新聞の発表会からスタート。相手チームの新聞を読みながら、付箋に感想を書いて貼っていきます。
【壁新聞1】「フードロスは本当に自分とは関係ない?」という、思わずドキッとするようなタイトルから始まり、誰もが楽しめるようにクイズを織り込みながら、「誰でもできるフードロス対策」についてまとめました。
「対策の方法が具体的で分かりやすい」「視線を誘導するためにクイズを活用していてすごい」「メッセージにぐっときた」などと感想が寄せられました。
【壁新聞2】「見て見ぬふりをせずに、ちょっと動いてみませんか?」と呼びかけながら、日本が出しているフードロスは世界の約5%を占めていると指摘。買いすぎを防ぐための方法として、宅配サービスの活用を提案しました。
「トピックスごとに分かりやすくタイトルがついていて見やすかった」「実際のサービスを紹介してくれているので、実行の難易度が下がっているように感じる」などと感想が寄せられました。
「効果的に伝える」ためには、どの情報をどこに配置するかということも、とっても重要なのだそう。NSPのWEBサイトを例に、どの部分がどれくらい読まれたりクリックされているかを分析し、効果的なレイアウトについて考えを深めました。「特に伝えたい内容は上の方にあるといいのでは?」「SNSアイコンはあまりクリックされていないので、意外と見られていないのか?」など、さまざまな考察が飛び交いました。これを受けた北原さんは、「実際の仕事の場でも、自分たちのコンテンツを見直しながら、ユーザーの気持ちや行動を予想して、何度も作り直しをしています。これが難しいんだけど、楽しい部分でもあるんですよね」と語りました。
キラキラと目を輝かせながらアイデアを出し合っていた生徒の皆さん。「伝える」ことの楽しさと難しさ、両方が分かった会だったのではないでしょうか。今回のセミナーをもって、信大長野中学校とのコラボレーションはフィナーレとなりました。コープながのさん、JA全農長野さん、平安堂さんと、たくさんの企業・団体の皆さまにご協力いただきながら、「フードロス」についての学びを深めてきた2人。このバトンは、後輩たちにもしっかりと受け継がれていくでしょう。NSPは、これからも附属長野中及び「あさひのプロジェクト」を応援していきます!